望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
聞き間違いだろうか。だって史輝はある時期から美紅への関心を失い、疎遠になっていったのに。

「……史輝くんは会わない間も、私のことを忘れてなかったのですか?」

「忘れる訳がないだろ? 事情が有って会えなくなってしまったが、ずっと心配だった」

今度は史輝が驚きの表情になった。

「本当に?……知りませんでした。私のことなんてすっかり忘れてしまったんだと思ってたから。結婚だってお母様の遺言で仕方なくだと」

「そんなことはない! 母が美紅を心配していたのは本当だが、妻にすると決めのは俺の意思だ。誰かの言いなりになった訳じゃない」

真摯な目で語る史輝の様子から、彼が言っていることは真実だと確信できた。

(史輝くんが私を選んでくれたんだ……)

とくんとくんと胸が高鳴る。喜びがこみ上げてぽろりと涙が零れてしまった。

「あ……ごめんなさい。これは嬉しくて……」

笛吹家の人たちは、美紅が悲しくて泣いていると、酷く怒った。

めそめそされると面倒だし、気分が悪くなるからだそうだ。

けれど史輝は気を悪くするどころか、席を立ち美紅の側に来てくれた。
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