望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「俺が美紅を泣かせてしまったんだな。でも嬉しい涙なら謝るのはおかしいな」

そう言って優しく微笑みながら、美紅の涙を拭ってくれる。

「はい。本当に嬉しくて……ありがとう、史輝くん」

「ああ」

史輝が美紅の体を抱きしめた。そっと労わるように引き寄せられ、広く温かな胸に頬を寄せる。

「こんな風にされたら泣き止めません」

「それなら好きなだけ泣いたらいい。美紅はいままで我慢し過ぎたんだ。気が済むまで泣いたらきっと新しい気持ちになれる。俺は美紅の味方だから大丈夫だ」

背中に回る腕に力がこもった。史輝の腕の中で、美紅は声を上げて泣いた。

喜びと切なさと安堵の気持。それらが一気に流れていくのを感じていた。


散々泣いた後は、気恥ずかしさが襲ってきた。

せっかく明日香が施してくれたメイクもぐちゃぐちゃになってしまっただろう。

(いろいろ何もかもどうしよう)

史輝の腕から体を起こして、パニックになっていると、くすりと笑った史輝がスタッフの女性を呼んでくれた。

「化粧直しをしておいで。俺は気にしないけど、美紅は困るんだろう?」

美紅はこくこくと頷いた。

「戻って来たら少し飲もう。隣はバーになっているんだ」
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