望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
窓ガラスには、史輝と並ぶ自分の姿がぼんやりと映っている。日常から切り離されたような幸せなひと時。

そんな中、美紅が見覚えがある風景が迫ってきた。

「あっ! あれはお台場ですよね?」

笛吹家の従業員に写真を見せて貰ったとき、一番気になったところだ。

「ああ」

「とても綺麗、この景色実際眺めてみたかったんです」

「それはよかった。この辺りに少し停船するそうだから、ゆっくり眺められる」

「本当に? うれしいです」

美紅がはしゃいでいると、女性スタッフが近付いて来て、史輝にそっと耳打ちした。

彼は頷くと美紅に目を向ける。

「美紅、外に出てもいいそうだがどうする?」

「外に? 行ってみたいです」

カウンター席を出て史輝と共に外に出る。肌ざわりのよいショールを貸して貰えたので、肩に羽織った。

「わあ……外に出るとまた雰囲気が違う気がします」

船内からの景色はもちろん美しかったが、外はそれにくわえて開放感がある。水辺の匂いもする。

「美紅、暗いから足元に気を付けろ」

史輝が美紅が転んでしまわないように支えてくれる。

「ありがとうございます」
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