望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
彼のエスコートはスマートで優雅だから、まるで自分が高貴なお嬢様になった気がして気恥ずかしい。

ふたり寄り添い船上に立ち、華やぐ岸を眺める。

「……今日、ここに連れて来て貰えて本当によかった。ありがとう」

心からの感謝を伝えると、史輝が気持に応えるように美紅の腰を抱き寄せた。

「よかった。情けないと思われるかもしれないが、どこに行こうか結構考えたんだ。美紅に少しでも楽しんで欲しくて。悩んだ甲斐があったよ」

「史輝くんが私のことを思って考えてくれたんだって、伝わってきた」

「美紅……」

史輝に見つめられて美紅は開きかけた口を閉ざした。

突然高まる緊張感に戸惑いを感じるのに、彼から目が離せない。

史輝の右手が美紅の頬に触れた。と思ったらもう片方の手で腰を引き寄せられて更にふたりの距離が近くなる。

驚き瞬きをしようとしたとき、唇が触れ合った。

どくんと一際高く鼓動が跳ねる。

すぐに離れたけれど、美紅は顔を真っ赤に染めて狼狽えた。

動揺する美紅から史輝は目を逸らさず、再び顔を近付けてくる。

「美紅、愛してる」

「史輝くん……んっ」

今度は一度目よりも長く唇が重なっていた。
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