ねぇ、嘘じゃないよ
エレベーターがきて、飛び込む。

愁夜も当然乗り込む。
ふいっとそっぽをむくとぽんぽんと頭を撫でられる。

はぁ。私の幼馴染はいつまでも人たらしだ。

あと少しで四年前のことになるあの出来事も、忘れてるんだろうな。


もうすぐ、春。

もうすぐ、高校の最後の学年になる。



中学1年生の終わり頃となった、あの春。
愁夜の友達は、愁夜と私を、からかって。

いちばんされたくないことを、された。



バカな愁夜だからきっと忘れてる。

馬鹿野郎。あのことで1年も話さなかったのに。
何事もなかったようにある日突然、笑いかけてきて。


馬鹿野郎。私ばっかり悩んで。
私ばっかり泣いて。私ばっかり。私ばっかりだ。

愁夜を人睨みしたけど、ずっと、落ち着かせるように、頭を撫でられるものだから諦めて愁夜に身を任せた。


遅い遅いエレベーターの端っこ、近すぎる距離で着きたい階につけるまで待つ。


恋人じゃないかと勘違いするほどの距離。
でもその距離は私たちにとっては当然で。

あはっ、愁夜に彼女さんができたら私睨まれちゃうかも。


呑気にそんなこと考えながら、待っている。
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