ねぇ、嘘じゃないよ
「「お待たせしました!」」
永遠と感じる時間を過ごしたあと、スタジオに二人走る。
というより、愁夜に手を引っ張られてスタジオに転がり込んだ。
「愁夜、痛いって!」
「ごめんごめん…」
さっきも睨んだのに、また睨んでしまう。
でも愁夜も愁夜で、全然学ばない。
いや、わかっててやるんだろう。
は?ドMか?
恥ずかしいことを急に思いついてしまって、私はやーめたと考えなくなった。
二人それぞれ違う部屋に入って、収録を始める。
「〜〜、〜…」
感情を込めて、一生懸命声を出す。
途中で休憩を入れながらも刻々と時間はすぎていった。
スタジオ前で愁夜を待ちながら、見てたスマホからハッと顔を上げれば辺りはすっかり暗くなっていて。
こくりこくり、寝そうになりながらもポツリと一人でまった。
そしたらわっと後ろから頭に手を置かれて。
振り返ればやっぱり、私の幼馴染。
「お待たせ。ダメ出しされすぎて長引いちまった」
…ダメ出し?
愁夜がダメ出しなんて珍しい。
「大丈夫?体調悪い?」
「いや…」
歯切れの悪い返事に首を傾げる。
「深煎りはしないけど、無理しないでね」