ねぇ、嘘じゃないよ
工藤佳純先輩。
女の子っぽいと先輩は笑うその名前は、とっても、綺麗。
工藤先輩は、私を、救ってくれた。
愁夜がいれなかったときは、一緒にいてくれた。
先輩は、とっても優しくて。
私のことを、妹みたいに守ってくれて。
それは多分、先輩にはなくなってしまった妹がいるから…。
私をその妹と、花凛ちゃんと重ねている。そう思ってる。
...でも、好き?
ありえない。
「おい、ゆう。先輩、なんつってた?」
怖いくらい愁夜の手が肩に食い込んだ。
…痛い。
「…好きだって。愁夜のことも考えたけど、やっぱり言いたかったって…」
黙り込んでしまった愁夜。
「返事、聞かせてほしいって言われて、色々あるみたいで電話切られちゃった」
すぅっと息を吸って、口をまた開ける。
「嘘じゃ、ないとも」
満員電車のなか、ぎゅうぎゅうになりながら静かに喋る。
ところどころ喋っている人はいるから、目立つこともなくコソコソと会話ができることをありがたく感じた。
「…ゆうは、あいつと付き合うのか?」
俯いた。
「わからない。先輩は先輩だし、恋愛する勇気も時間もないけれど…。先輩には恩があって、それを返したいから…それに先輩は魅力的だし、誠実に向き合ってくれているし…」
助けられたこと、たくさんある。
救われたこと、たくさんある。
これからも助けられてしまうんだろうな。
迷惑いっぱいかけてしまうんだろうな。
私がどれだけこっ酷くフったとて、私が話したいと言えば、辛くても笑顔で向かってくれるんだろうな。
先輩は憧れるほど男女どちらにも人気で。
でも着飾らない誠実さと優しさをもっていて。