ねぇ、嘘じゃないよ
そんな工藤先輩。
先輩として、憧れる。



工藤先輩は、好きというより、憧れだから。




それに私はいまだに過去に粘りついたままで。
今ある幸せにしがみついてて。




あぁでも。

先輩を傷つけるなんてできない。
したくない。




二人黙り込んでしまう、気まずい空間が漂う。

つきたい駅について、電車を降りて、カバンを握りしめながら俯いた。



愁夜、そう呼びかけたけど、言えなくって。

はぁ、そうため息をつきそうになった。


「ゆう」
愁夜が何か言いかけた、けど。


「ゆうちゃん!」
後ろから声がした。



振り返ると、やっぱり、先輩で。

「先輩、」
こぼれ落ちた言葉はそれしか出なかった。




「と、愁夜くん」
いつもはにこっと先輩は笑うけど、今日は訝しげにじっと見据えてる。



「愁夜くんと一緒ってことは…愁夜くんも、知ってるのかな?」
「あっ、はい…勝手にお話ししてしまってすみません…」


ぺこりとお辞儀をすると、いつもの綺麗な笑顔で首を振った。


「いや、多分話すだろうなとは思っていた。というより、こっちこそお邪魔してしまってごめんね」
「いえ、!大丈夫です。ね、愁夜、?」

愁夜はみてくれなくて。

「俺帰る」
スタスタと歩いてゆくから追いかけようとしたけれど、先輩が私の腕をきつく掴んでいたからいけなかった。


「せんぱいっ、愁夜が」
「大丈夫、愁夜くんは今、放っておった方がいいと思うから…」

…なんて言っても行かせてくれないんだろうな。
心の中でポツリと呟いて、あきらめた。
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