ねぇ、嘘じゃないよ
二人歩き出して、途中で小さく言葉を交わしながら家へと向かう。

半分くらいついた頃で、前から走ってくる人がいた。



「ゆうっ!!」

「愁夜!?」


ぎゅっと手を握られて、先輩の前なのにちょっと微笑んでしまった。

…すごく、優しい。強引じゃないや。


「愁夜夜ご飯食べた?」
お腹空いてないのかな…?帰ったんだから食べればいいのに、なんで私のこと探してるんだろ。

「食べてねーよ。だってゆう今日うちで食べるだろ?何ゆうちゃん置いてきてんのよって母さんに怒られた」
「あ…そういえば愁夜んちで食べることになってたっけ」
「そ、何忘れてんのって言われた」

美恵さんに悪いことしたなー…。
謝んないと。


「なんで、先輩、ここまででいいです。ゆうを送ってくれてありがとうございました」
ぺこりと愁夜はお辞儀をする。

「…わかった。またね、ゆうちゃん」
笑顔でそう言われたから、はい、と言う。

「美恵さんの手料理だぁ!!」
そう先輩と愁夜を置いて、はしゃいでる私は、先輩のことが見えなかった。



「…愁夜くんには絶対負けないから」
敵意満々で愁夜にそう言っていたのを。
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