ねぇ、嘘じゃないよ
どんどんどん、大きな足音が聞こえて愁夜が部屋に入ってくる。

「おっ、ケーキ」

髪を濡らしたままに短パン半袖シャツ状態の愁夜は昔と変わらない。



「こっちきて、髪乾かしてあーげる」

ドライヤーを持ってたから、愁夜のベッドに乗っかってその前に問答無用で愁夜を座らせる。



さらさらで、綺麗で、ふんわりとした品の良すぎる髪をとかしながらドライヤーで乾かす。

シャンプーのシトラスの香りが何だかくすぐったく感じる。


ばさばさ。


大人しく座ってる愁夜ってなんか珍しいな、と微笑んだ。

愁夜はやんちゃで、走り回ってるイメージが強いから。


「あなたたち、本当に距離が近いわよねぇ」

突然の呆れたような美恵さんの声に笑ってしまう。



「まぁね…それは自分でもちょっと近いなとは思うけど…」

これが一番いいんだもん。


お互い気にせずいたほうが楽じゃん?



愁夜とそう(めくばせ)をして、ねーとニコってする。



「仲がいいのはいいことだけれど…よく愁夜も耐えるわねぇ…」

「うるせー」

よくわからない承知の事実を話す二人に首を傾げているうちに、愁夜の髪の毛はいつも通りに乾いていた。




「おわりっ!ケーキ食べよ!」



ベッドからぴょんっと降りて美恵さんが待っていた方に駆け寄る。
< 23 / 57 >

この作品をシェア

pagetop