ねぇ、嘘じゃないよ
私好きな人なんかいないのに、おかしいよね、そう笑って、愁夜を見る。

…へ?

驚愕した愁夜の顔が目に飛んでくる。


「愁夜、?」


わからない。

愁夜は、なぜそんなに動揺してるの?


ただの夢だよね。変な夢見たー!って、言ってるだけだよね。



もしかして、これは、あの夢は、現実?



「…なんでもない。ほら、ゆう、支度しなきゃ。部屋出てくね」

あれこれ考えてるうちに愁夜はいつもの顔に戻った…訳でもないけれど、さっと顔を逸らされて走るように部屋を出ていった。





昨日洗濯してもらった制服を腕に通して、リボンをキュッとしめる。







もうすぐ、高校三年生。高校、最後の年。


愁夜のことを考えてしまう。



私は、大学生になっても、社会人になっても。
愁夜と一緒にいれると思っていた。



でも、愁夜には、なりたいものがあったら?

モデルの仕事も俳優の仕事も辞めて、違うものになったら?



そしたら、一緒にはいれないのかも。





それに、モデルも女優も。永遠に人気なままではいれない。
流行りなんてすぐ変わる。潮時だって普通の職業よりも何倍も早い。



途端、こわくなった。
モデルじゃない私は、どうなるんだろう。
女優じゃない私は、どんな生活を送るんだろう。



結婚するのかな。
他の女優みたいに、結婚して、潮時が来たら、辞めて、家族を築くのかな。

働くのかな。
普通の職業で働いて、モデルだなんてことも忘れられて。そんなのもいいのかもしれない。
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