ねぇ、嘘じゃないよ
「そんなのっ、」

はぁはぁっ、息ができなくなりそうで。

「うそだっ!!」


認めたくなかったからなのか、
嫌悪からなのか、

私は、そう叫んで。

絶望する愁夜を、置いていった。



必死で必死で、転びそうになっても、走り続けた。





愁夜の前では、泣かない。
絶対泣かない。

泣くのは、家に帰ってからーーーーー。





でも、ぼんやりとした、夢を見ているような、ふわふわとした気持ちの中に、ぽろりと両目からふたつぶ、こぼれ落ちた涙があったのを、覚えている。








4月1日、嘘をついていい日のことだった。














そのあと、私と愁夜は、話すことはなくなった。


私を見ると、愁夜は苦しそうにしたあと目を逸らすばかりで、なんでウソ告したほうがそんな顔をするのだろうと、怒りを感じながらも私も無視し続けて。

周りの子には、大変、気を使わせてしまった。


そんなことがあってから、一年後くらい。

中3になった私は、モデルの仕事を始めていた。


もう愁夜のことで悩む暇もないから、愁夜のことはとっくに許していた。



そんな矢先に、同じ会社にオーディションを受けて受かったのが、愁夜。

「あっ、ゆう!」

何事もなかったかのように笑顔で接する愁夜に目を見張るも、無視するわけにもいかないから、笑い返した。


それから、だんだんと私たちは、昔のようになっていった。
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