ねぇ、嘘じゃないよ
教室の戸をガラガラ。
「ゆうゆうー!」
飛びかかるその人は、私の親友。
「あかりん」
宮沢燈。
こと、あかりんだ。
綺麗な黒髪を揺らしながら、彼女はにーっと笑う。
「ゆうゆう、ほんと〜にかわいい!」
あかりんの口癖は、「かわいい」
かわいいかわいい毎日言われるものだから、最初は照れたけれど、今となっては微妙な苦笑いをしてしまう。
「はいはい、あかりんもかわいーよ」
呆れたように言っているけれど、あかりんはかわいい。それも、ものすごく。
視力がダメダメでとっても地味なメガネを被ってるから、よくお顔が見れないのだけれど。
メガネを取ると、とーってもかわいいんだ。
突然ぎゅ、と腕を掴まれて、すりすりとあかりんは頬を私の腕に滑らせる。
小柄なあかりんだから、身長差がちょっと面白い。
「しゅーやくん、おはよ」
チラッと見上げて、いたんだ、とでもいうようにあかりんは愁夜を見た。
愁夜も私の腕を掴んでいて、負けじとあかりんを睨みつけている。
べったりと両腕を親友と幼馴染にくっつかれちゃ、私はなにもできない。
しかも、すごく暑い。どいてくれ。
「愁夜、どけって。みんなが待ってる」
じーっと遠巻きに見てきたクラスのみんなが、私の発言をきっかけにわっと寄ってくる。
「愁夜くんおはよっ!!」
「愁夜おはよー」
男女どちらにも大人気の愁夜。
いればすぐに人が寄ってくる、そんな人。