ねぇ、嘘じゃないよ
「でもさ、ゆうちゃん。のぞみのない、相手より、ある人の方がいいんじゃない?」

え…?


「愁夜くんは、ウソ告をするような人だよ。付き合っても騙してるに決まってる。ゆうちゃんもわかってるだろ?」

…やだ。

肩を掴まれ、狂気じみてる目が合う。





「…僕にしときなよ」
ボソッと呟いて先輩は、私の頬にキスをしたーーーー。



「いやですっ、わたしっ…」
反抗しようと声を荒らげた。



そのとき。




「おまっ、何やってんだ!!」


「愁夜がすきなんですっ!!!!」


私の言葉と、一番大好きな人の声が重なって、涙がポロポロ流れる顔を上げた。



「あーーー…邪魔者が入った」

チッと舌打ちをして、先輩は帰っていったー、

そう思ったら。


私の唇のすぐ横のところにちゅっとキスをして、それから本当に去って行く。





「おまっ…」

愁夜が駆け寄ってくる。




…きて、くれた。


流れる涙はもう、怖さのせいじゃない。

嬉しいから、なんだ…。


「大丈夫か!?あいつ、キスしやがって…。怪我してないか!?あぁくそ、絶対許さん…」

こくこく、頷いた。




嫌なほど、すきなひと。

のぞみのない、すきなひと。

そんな人が、きてくれた。


嬉しい…。




って、それより。



聞こえてた、?


愁夜がすき、って、きこえてた、?





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