ねぇ、嘘じゃないよ
なぁ、でも、ゆう。

嘘って、なんだ?




俺はこっ酷くフラれたんだ。

ゆうの隣にいれるのは俺じゃない。



わかってても…それでも、隣にいたい。

俺のわがままなんだ。



俺の嫁さんになるのはゆう以外ありえないし、それが無理だったら一生結婚なんかしなくたっていい。

両親には悪いけど、俺の新郎姿も、孫の姿も、見せられねーよ。




あぁでも、俺は、フラれたんだ。


お嫁さんになんかは、なってくれやしない。

俺は、ゆうが他のもののやつになるのを、見るだけなんだ。



そんなの、見たくないに決まってるだろ…。




4月1日、午前中のうちなら、嘘をついていい日だった。




フラれた気まずさとか痛みも、そんな光景の見たくなさも、優しさに漬け込んでいた事実も、何もかも情けなくて情けなくて、もう、二度とゆうとは、話さない、そう思っていた。


でも、無理で。一番すきな人と話せないのは無理で。



…へらっと笑って、俺はまた、話しかけた。

俳優になるなんて、ストーカーじみたことをするまで。



俺は、醜い人間で。

気持ち悪いことなんて、そんなこと、とっくに気づいてる。



付き合ったら付き合ったで他の男…ファンも含めて嫉妬で狂ってしまうだろうし、引かれるようなことして嫌われてもおかしくない、そう思えてしまうほど、ゆうしか頭になくて、なんて情けねーんだ俺は、と自分に呆れた。
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