Runaway Love
休み休み、どうにかアパートまでたどり着く。
怖くて、後ろは振り返られなかった。
――一体、どういうつもりなんだ、あの人は。
昔も同じような感じだったが、更に悪化したんじゃないだろうか。
掴まれた左腕の感触が、今更ながらに気持ち悪くなり、思わず振る。
けれど、その振動で傷が痛み、顔をしかめてしまった。
深呼吸して、どうにか痛みを逃すと、あたしは、玄関前で荷物を置き、鍵を開けて、また荷物を抱えて中に入る。
「よいしょっ……!」
もう、掛け声もあきらめた。
後は、生活用品がもう少しで無くなりそうだから、また、ドラッグストアに買いに行かないといけない。
気が滅入るが、さっきの今で、先輩がいる事は無いだろう。
友人の家にいるって言っていたし。
あたしは、急いで冷蔵庫の中に食材を入れ、乾物は棚に片付ける。
一息つく間も無く、再びバッグを持つと、またスマホが振動した。
中から取り出すと、今度は野口くんだ。
一瞬、固まるが、深呼吸して通話にする。
『おはようございます――今、大丈夫ですか』
「うん、おはよう。て、お昼過ぎてるけどね。ちょうど、買い物から帰ったところ」
『そうですか。――これから予定無ければ……会えますか』
思わず鳴ってしまう心臓を、どうにか落ち着ける。
「ご、ごめんなさい。まだ、買い物が残ってるの」
『――付き合いますよ?』
「ううん、大丈夫。ありがと」
すると、野口くんは、無言になる。
「――……の」
言いかけて止まった。
罰ゲームの威力はすごい。
「……か、駆、くん?」
すると、クッ、と、笑いをガマンしきれなかったのか、声が漏れる。
『茉奈さん、罰ゲーム効いてますね』
「――……意地悪」
少しだけふてくされる。
彼の方が年下なのに、精神年齢はだいぶ上みたいに感じてしまうのは何でだ。
『ちょっと残念ですけど』
「何よ、それ」
『冗談です。――でも、荷物持ちくらい、しますよ?』
ありがたい申し出だけど、時間はもう二時近い。
これから野口くんが来るのを待って、買い物に行って、と、頭の中でシミュレーションをすると、やはり時間が無い。
それに――今は、まだ気持ちが切り替えられない。
「ありがと。でも、今日は、ホントに大丈夫だから」
『――わかりました』
ほんの少し、ふてくされたような口調に聞こえ、あたしは慌てる。
「あ、あのね、嫌とかじゃないのよ。ただ、これから、やる事考えたら、やっぱり時間無いって思って……」
『わかってます。……それが、茉奈さんですもんね』
「駆くん」
何だか、ちょっと引っかかりそうな言い方に聞こえたが、すぐに気を取り直す。
彼にとっては、深い意味は無いんだろう。
『――それじゃあ……来週、リベンジで、本見に来ませんか?見損ねたヤツ、気になってるでしょう?』
あたしは、この前のやり取りを思い出し、全身が熱くなる程に赤くなる。
どんどん、鼓動が速くなり、ごまかすようにうなづいた。
「――……わ、わかったわ……」
『――……楽しみにしてますから』
通話を終え、あたしは、その場に座り込む。
――……え、や、やっぱり、そういう事なのよね……??
もう、覚悟しなきゃいけないのだ。
だったら、それなりに、ちゃんとしないと――。
思わず着ていたブラウスを引っ張って、中の下着を確認をする。
――そして、青くなった。
――……マ、マズい……!
今、持ってる下着、全部、だいぶ着古してる!!
え、コレ、新しい下着とかだと、逆に張り切ってると思われる……⁉
あたしは、降ってわいた疑問に、頭を悩ませ続けてしまい、気がつけば夕方を過ぎていたのだった。
怖くて、後ろは振り返られなかった。
――一体、どういうつもりなんだ、あの人は。
昔も同じような感じだったが、更に悪化したんじゃないだろうか。
掴まれた左腕の感触が、今更ながらに気持ち悪くなり、思わず振る。
けれど、その振動で傷が痛み、顔をしかめてしまった。
深呼吸して、どうにか痛みを逃すと、あたしは、玄関前で荷物を置き、鍵を開けて、また荷物を抱えて中に入る。
「よいしょっ……!」
もう、掛け声もあきらめた。
後は、生活用品がもう少しで無くなりそうだから、また、ドラッグストアに買いに行かないといけない。
気が滅入るが、さっきの今で、先輩がいる事は無いだろう。
友人の家にいるって言っていたし。
あたしは、急いで冷蔵庫の中に食材を入れ、乾物は棚に片付ける。
一息つく間も無く、再びバッグを持つと、またスマホが振動した。
中から取り出すと、今度は野口くんだ。
一瞬、固まるが、深呼吸して通話にする。
『おはようございます――今、大丈夫ですか』
「うん、おはよう。て、お昼過ぎてるけどね。ちょうど、買い物から帰ったところ」
『そうですか。――これから予定無ければ……会えますか』
思わず鳴ってしまう心臓を、どうにか落ち着ける。
「ご、ごめんなさい。まだ、買い物が残ってるの」
『――付き合いますよ?』
「ううん、大丈夫。ありがと」
すると、野口くんは、無言になる。
「――……の」
言いかけて止まった。
罰ゲームの威力はすごい。
「……か、駆、くん?」
すると、クッ、と、笑いをガマンしきれなかったのか、声が漏れる。
『茉奈さん、罰ゲーム効いてますね』
「――……意地悪」
少しだけふてくされる。
彼の方が年下なのに、精神年齢はだいぶ上みたいに感じてしまうのは何でだ。
『ちょっと残念ですけど』
「何よ、それ」
『冗談です。――でも、荷物持ちくらい、しますよ?』
ありがたい申し出だけど、時間はもう二時近い。
これから野口くんが来るのを待って、買い物に行って、と、頭の中でシミュレーションをすると、やはり時間が無い。
それに――今は、まだ気持ちが切り替えられない。
「ありがと。でも、今日は、ホントに大丈夫だから」
『――わかりました』
ほんの少し、ふてくされたような口調に聞こえ、あたしは慌てる。
「あ、あのね、嫌とかじゃないのよ。ただ、これから、やる事考えたら、やっぱり時間無いって思って……」
『わかってます。……それが、茉奈さんですもんね』
「駆くん」
何だか、ちょっと引っかかりそうな言い方に聞こえたが、すぐに気を取り直す。
彼にとっては、深い意味は無いんだろう。
『――それじゃあ……来週、リベンジで、本見に来ませんか?見損ねたヤツ、気になってるでしょう?』
あたしは、この前のやり取りを思い出し、全身が熱くなる程に赤くなる。
どんどん、鼓動が速くなり、ごまかすようにうなづいた。
「――……わ、わかったわ……」
『――……楽しみにしてますから』
通話を終え、あたしは、その場に座り込む。
――……え、や、やっぱり、そういう事なのよね……??
もう、覚悟しなきゃいけないのだ。
だったら、それなりに、ちゃんとしないと――。
思わず着ていたブラウスを引っ張って、中の下着を確認をする。
――そして、青くなった。
――……マ、マズい……!
今、持ってる下着、全部、だいぶ着古してる!!
え、コレ、新しい下着とかだと、逆に張り切ってると思われる……⁉
あたしは、降ってわいた疑問に、頭を悩ませ続けてしまい、気がつけば夕方を過ぎていたのだった。