Runaway Love
37
翌日から、怒涛の忙しさだ。
末締めに間に合うようにやってくる請求書類は山になるのに、他の通常業務もある。
今月こそは、平和に終わりたいと思うのに、毎月何かしらトラブルがあるのは、何でだ。
日に日に帰宅時間は遅くなり、木曜日あたりには、全員寝不足感が否めない。
「――よし、今日を超えれば、ひと段落つくからなー」
大野さんが、パソコンをにらみつけながら、自分に言い聞かせるようにボヤいた。
お昼のベルが鳴っても、全員動く事は無い。
「あ、あたし、社食行ってサンドイッチ買ってきます。良かったら、買って来ましょうか?」
すると、外山さんが、そう言って立ち上がる。
社食では、おにぎりとサンドイッチは、持ち帰りも可能だ。
その言葉で、ようやく時間が過ぎている事に気がついた。
「ああ、頼む。オレは握り飯の方が良い。三つ。具は任せた。あと、ついでに茶も頼む」
大野さんが、そう言って自分の財布から千円札を取り出す。
「わかりました!杉崎主任は、お弁当あります?」
「ええ、ありがとう」
「野口さん、どうします?」
「――ああ、大丈夫」
そう言って、引き出しを開けようとするので、あたしは止めた。
「野口くん、ちょっと待って。また、携帯食?」
「……はあ……」
「――外山さん、サンドイッチ、二つ、何でも良いわ」
「あ、ハ、ハイ!」
あたしが、財布を取り出そうとすると、野口くんは慌てて立ち上がった。
「す、杉崎主任、自分で出しますっ!外山さん、お願いします!」
そう言って、外山さんにお札を手渡す。
彼女はうなづいて、部屋を出て行った。
「野口、何か、尻に敷かれてないかぁ?」
「お、大野さん!」
からかうように言う大野さんに、あたしは言い返す。
「だって、野口くん、放っておくと携帯食ばかりで済ませるんですから!そればっかりじゃ、身体、壊すでしょう!」
すると、大野さんは、ククッ、と、笑った。
「――何だ、そりゃ。カミさんみたいな言い方だな、杉崎」
そして、あたし達を交互に見やり、からかうように言う。
「え」
「……っ……!」
意味が良くわからず、キョトンとするあたしだが、野口くんは、目を剥いて固まった。
「まあ、順調で何よりだ」
「大野さんっ!」
あたしは、笑い続ける大野さんを、ジロリとにらみつけると、手元の書類に目を落とす。
――こんな言い合いしている場合ではないんだから。
外山さんが帰って来るまで、あたし達はそのまま仕事を続けたのだった。
「――じゃあ、週明けから、杉崎は南工場な」
「――はい。……ご迷惑をおかけします」
ようやく終了し、エレベーターに全員で乗り込む。
時間は既に、九時を回った。
「いや、辞められるよりは良い。それに、リモートでも仕事振れるんだから」
「……さ、最初は、もたつくと思います……。そういうの、弱いんで……」
それに、南工場がどういう場所なのかも、わからない。
すべてが初めてなのだから。
「ああ、部長も同じ感じだしな。大丈夫だろ」
「――……まあ、やってはみますが……」
「杉崎主任、あたしも、少しは慣れてきましたから!こっちは心配しないでください!」
外山さんが、握りこぶしを作りながら、あたしに宣言する。
「――ホント、頼もしい後輩で良かったわ」
――それは、本心だ。
あたしは、そう言って、彼女に笑って返した。
末締めに間に合うようにやってくる請求書類は山になるのに、他の通常業務もある。
今月こそは、平和に終わりたいと思うのに、毎月何かしらトラブルがあるのは、何でだ。
日に日に帰宅時間は遅くなり、木曜日あたりには、全員寝不足感が否めない。
「――よし、今日を超えれば、ひと段落つくからなー」
大野さんが、パソコンをにらみつけながら、自分に言い聞かせるようにボヤいた。
お昼のベルが鳴っても、全員動く事は無い。
「あ、あたし、社食行ってサンドイッチ買ってきます。良かったら、買って来ましょうか?」
すると、外山さんが、そう言って立ち上がる。
社食では、おにぎりとサンドイッチは、持ち帰りも可能だ。
その言葉で、ようやく時間が過ぎている事に気がついた。
「ああ、頼む。オレは握り飯の方が良い。三つ。具は任せた。あと、ついでに茶も頼む」
大野さんが、そう言って自分の財布から千円札を取り出す。
「わかりました!杉崎主任は、お弁当あります?」
「ええ、ありがとう」
「野口さん、どうします?」
「――ああ、大丈夫」
そう言って、引き出しを開けようとするので、あたしは止めた。
「野口くん、ちょっと待って。また、携帯食?」
「……はあ……」
「――外山さん、サンドイッチ、二つ、何でも良いわ」
「あ、ハ、ハイ!」
あたしが、財布を取り出そうとすると、野口くんは慌てて立ち上がった。
「す、杉崎主任、自分で出しますっ!外山さん、お願いします!」
そう言って、外山さんにお札を手渡す。
彼女はうなづいて、部屋を出て行った。
「野口、何か、尻に敷かれてないかぁ?」
「お、大野さん!」
からかうように言う大野さんに、あたしは言い返す。
「だって、野口くん、放っておくと携帯食ばかりで済ませるんですから!そればっかりじゃ、身体、壊すでしょう!」
すると、大野さんは、ククッ、と、笑った。
「――何だ、そりゃ。カミさんみたいな言い方だな、杉崎」
そして、あたし達を交互に見やり、からかうように言う。
「え」
「……っ……!」
意味が良くわからず、キョトンとするあたしだが、野口くんは、目を剥いて固まった。
「まあ、順調で何よりだ」
「大野さんっ!」
あたしは、笑い続ける大野さんを、ジロリとにらみつけると、手元の書類に目を落とす。
――こんな言い合いしている場合ではないんだから。
外山さんが帰って来るまで、あたし達はそのまま仕事を続けたのだった。
「――じゃあ、週明けから、杉崎は南工場な」
「――はい。……ご迷惑をおかけします」
ようやく終了し、エレベーターに全員で乗り込む。
時間は既に、九時を回った。
「いや、辞められるよりは良い。それに、リモートでも仕事振れるんだから」
「……さ、最初は、もたつくと思います……。そういうの、弱いんで……」
それに、南工場がどういう場所なのかも、わからない。
すべてが初めてなのだから。
「ああ、部長も同じ感じだしな。大丈夫だろ」
「――……まあ、やってはみますが……」
「杉崎主任、あたしも、少しは慣れてきましたから!こっちは心配しないでください!」
外山さんが、握りこぶしを作りながら、あたしに宣言する。
「――ホント、頼もしい後輩で良かったわ」
――それは、本心だ。
あたしは、そう言って、彼女に笑って返した。