Runaway Love
”けやき”の駐車場に車を停め、照行くんがエンジンを切る。
貸し切り状態なだけあって、今夜は以前のような行列も、まったく無い。
すると、店の中から、女性二人が我先にと出てきた。
「あ、沙弥さん、みちるさん!ご無沙汰してますー!」
「奈津美ちゃん、久し振りー!」
「結婚、おめでとう。式に行けなくて、ごめんなさいね」
車から降りた奈津美の元に駆け寄ると、三人で盛り上がる。
すると、髪を後ろでお団子にした女性が、あたしに視線を向けた。
奈津美は上機嫌で、あたしの腕を引っ張る。
「姉の茉奈です!」
紹介された以上、挨拶しない訳にはいかない。
「――初めまして」
軽く頭を下げると、二人の目が輝き出した気がして、一瞬怯む。
――え、何。
そんなあたしに構う事なく、二人はニコニコと挨拶してきた。
「初めましてー!沙弥です!ウチの将ちゃんが、お世話になってますー!」
「え」
――”ウチの”?
……という事は、もしかしなくても、お兄さん達の奥さん方か。
あたしが把握するのを確認してから、沙弥さんの隣――ショートカットの眼鏡の女性が頭を軽く下げた。
「――初めまして、みちるです。以前から、お話は主人に聞いてますよ。お会いしたかったです」
「――え」
その言葉にギクリと反応してしまう。
「ホラ、二人とも、中に入ってもらってからにしなさい」
すると、店内から声が聞こえてきて、あたしはそちらを見やる。
ドアの向こうから出てきたのは、先日会ったばかりの、おじいさんだ。
「ハーイ!」
「さ、どうぞ、お入りください」
促され、全員で中に入ると、出来立てだろう料理の数々のいい香りが漂ってきて、思わずお腹が鳴りそうになる。
慌てて、さりげなく押さえていると、真ん中にセッティングされたテーブルに、奈津美と照行くんが座らされ、あたしと母さんは、その両側に案内された。
そして、座ると同時に、お姉さん方が準備していた料理を次々と並べていく。
目の前のそれに目を奪われてしまうのは、仕方ないだろう。
洋食には、だいぶ縁が薄くなったので、物珍しいのもあったが、何よりも美味しそうだ。
あたしが、凝視していると、目の前にシャンパングラスが差し出された。
「え」
顔を上げ、そちらを見やり、一瞬硬直する。
「――どうぞ、茉奈さん。ノンアルですから」
岡くんが、グラスを置いて、あたしをのぞき込むと、クスリ、と、笑った。
「――……何」
「……いえ。――アルコールは入れない方が良いですよね?」
意味深な言葉に、思わず眉を寄せる。
「……うるさいわね」
小声のやり取りは、最初からハイテンションで盛り上がっている奈津美達には、聞こえていないようだ。
そして、彼は当然のように、あたしの隣に座った。
「――さて、時間も時間ですし。簡単ですが、照行くん、奈津美ちゃん、結婚おめでとう」
それを見計らったように、厨房からおじいさんが出てきて、持っていたグラスを上げる。
乾杯、と、音頭が取られ、全員で軽くぶつけると、会食は始まった。
貸し切り状態なだけあって、今夜は以前のような行列も、まったく無い。
すると、店の中から、女性二人が我先にと出てきた。
「あ、沙弥さん、みちるさん!ご無沙汰してますー!」
「奈津美ちゃん、久し振りー!」
「結婚、おめでとう。式に行けなくて、ごめんなさいね」
車から降りた奈津美の元に駆け寄ると、三人で盛り上がる。
すると、髪を後ろでお団子にした女性が、あたしに視線を向けた。
奈津美は上機嫌で、あたしの腕を引っ張る。
「姉の茉奈です!」
紹介された以上、挨拶しない訳にはいかない。
「――初めまして」
軽く頭を下げると、二人の目が輝き出した気がして、一瞬怯む。
――え、何。
そんなあたしに構う事なく、二人はニコニコと挨拶してきた。
「初めましてー!沙弥です!ウチの将ちゃんが、お世話になってますー!」
「え」
――”ウチの”?
……という事は、もしかしなくても、お兄さん達の奥さん方か。
あたしが把握するのを確認してから、沙弥さんの隣――ショートカットの眼鏡の女性が頭を軽く下げた。
「――初めまして、みちるです。以前から、お話は主人に聞いてますよ。お会いしたかったです」
「――え」
その言葉にギクリと反応してしまう。
「ホラ、二人とも、中に入ってもらってからにしなさい」
すると、店内から声が聞こえてきて、あたしはそちらを見やる。
ドアの向こうから出てきたのは、先日会ったばかりの、おじいさんだ。
「ハーイ!」
「さ、どうぞ、お入りください」
促され、全員で中に入ると、出来立てだろう料理の数々のいい香りが漂ってきて、思わずお腹が鳴りそうになる。
慌てて、さりげなく押さえていると、真ん中にセッティングされたテーブルに、奈津美と照行くんが座らされ、あたしと母さんは、その両側に案内された。
そして、座ると同時に、お姉さん方が準備していた料理を次々と並べていく。
目の前のそれに目を奪われてしまうのは、仕方ないだろう。
洋食には、だいぶ縁が薄くなったので、物珍しいのもあったが、何よりも美味しそうだ。
あたしが、凝視していると、目の前にシャンパングラスが差し出された。
「え」
顔を上げ、そちらを見やり、一瞬硬直する。
「――どうぞ、茉奈さん。ノンアルですから」
岡くんが、グラスを置いて、あたしをのぞき込むと、クスリ、と、笑った。
「――……何」
「……いえ。――アルコールは入れない方が良いですよね?」
意味深な言葉に、思わず眉を寄せる。
「……うるさいわね」
小声のやり取りは、最初からハイテンションで盛り上がっている奈津美達には、聞こえていないようだ。
そして、彼は当然のように、あたしの隣に座った。
「――さて、時間も時間ですし。簡単ですが、照行くん、奈津美ちゃん、結婚おめでとう」
それを見計らったように、厨房からおじいさんが出てきて、持っていたグラスを上げる。
乾杯、と、音頭が取られ、全員で軽くぶつけると、会食は始まった。