Runaway Love
49
一段と盛り上がって来たのか、店の中の喧騒は、さらに増していく。
そこから、まるで、世界が切り取られたかのように、あたしと岡くんは、並んでソファに座ったままだった。
だんだんと闇は濃くなっていき、街灯と、店の窓から漏れる明かりだけが浮き彫りだ。
「――……あの……」
すると、岡くんは、遠慮がちに口を開いた。
「……何」
あたしは、ぶっきらぼうに答える。
「……じいちゃん、何か、ヘンなコト、言ってませんでしたか?」
その問いには、答えない。
どれが、彼にとって不都合な事なのか、わからないし。
「……茉奈さん……あの……」
あたしは、言葉が終わらないうちに立ち上がる。
そして、入り口のドアを開けた。
「茉奈さん」
彼の呼び止める声も聞かず、あたしは歩き出す。
外を吹く風に、揺れる髪を押さえた。
「ど、どこ行く気ですか」
「――別に。……風に当たりたかっただけ」
肩越しに振り返れば、店内はブラインドが下がっていて、明るい事しかわからない。
それが、余計に、二人だけという事を感じさせる。
「――……茉奈さん。……明日は、空いてますか」
あたしを見つめたまま、岡くんは、少し気まずそうに口を開いた。
「何で」
「……いえ、あの……」
「――予定入ってるわ。――……野口くんと」
そう告げた瞬間、腕が掴まれる。
いつもよりも強い力に、あたしは眉を寄せた。
「……離してよ」
「――……離したくないです」
「――……明日、明後日、一緒にいる予定なの。アンタに空ける時間は無いわよ」
あたしは、自然とうつむきながら――自分に言い聞かせるように、彼に言う。
そうしないと、自分の心が、わからなくなりそうだから。
すると、力任せに腕が引かれ、店の裏へ引きずられるように連れて行かれる。
「ちょ……っ……何っ……」
その手を離そうと、もがいてみるが、ビクともしない。
いつもは、手加減してくれていたんだと、今さらながらに気づく。
そして、真っ暗な中、建物の陰に行き、背を壁にぶつけられるように押しつけられた。
その勢いに、痛みが走る。
「いっ……」
顔をしかめ文句を言おうとするが、そんな間も無く、唇を塞がれた。
「――っ……!」
両手首を強く押さえつけられ、あたしは身動きがとれない。
どんどん激しくなる口づけに、呼吸は荒くなる。
「――んっ……はっあっ……んうっ……」
呼吸をするために、少しだけ唇を離されると、意思の無い言葉が漏れ出す。
すると、思い切り強く抱き寄せられ、さらに攻勢を強められた。
徐々に、あたしの中の何かが呼び起こされ、うずきに堪えられなくなる。
あたしは、残りわずかになっていく理性をかき集め、岡くんの服を握りしめた。
――ねえ、お願いだから、これ以上振り回さないで。
――お願いだから――逃げさせて。
「――……絶対に、逃がしませんから」
あたしの心の声が聞こえるの。
ほんの少し離れた唇から、聞こえた言葉に、思わず反応してしまう。
「あなたが、誰といようが――誰と寝ようが――最後には、オレが奪います。覚悟してください」
そう言うと、再び、唇は重ねられ、感触を覚え込ませるように口内はすべて彼に奪われた。
そこから、まるで、世界が切り取られたかのように、あたしと岡くんは、並んでソファに座ったままだった。
だんだんと闇は濃くなっていき、街灯と、店の窓から漏れる明かりだけが浮き彫りだ。
「――……あの……」
すると、岡くんは、遠慮がちに口を開いた。
「……何」
あたしは、ぶっきらぼうに答える。
「……じいちゃん、何か、ヘンなコト、言ってませんでしたか?」
その問いには、答えない。
どれが、彼にとって不都合な事なのか、わからないし。
「……茉奈さん……あの……」
あたしは、言葉が終わらないうちに立ち上がる。
そして、入り口のドアを開けた。
「茉奈さん」
彼の呼び止める声も聞かず、あたしは歩き出す。
外を吹く風に、揺れる髪を押さえた。
「ど、どこ行く気ですか」
「――別に。……風に当たりたかっただけ」
肩越しに振り返れば、店内はブラインドが下がっていて、明るい事しかわからない。
それが、余計に、二人だけという事を感じさせる。
「――……茉奈さん。……明日は、空いてますか」
あたしを見つめたまま、岡くんは、少し気まずそうに口を開いた。
「何で」
「……いえ、あの……」
「――予定入ってるわ。――……野口くんと」
そう告げた瞬間、腕が掴まれる。
いつもよりも強い力に、あたしは眉を寄せた。
「……離してよ」
「――……離したくないです」
「――……明日、明後日、一緒にいる予定なの。アンタに空ける時間は無いわよ」
あたしは、自然とうつむきながら――自分に言い聞かせるように、彼に言う。
そうしないと、自分の心が、わからなくなりそうだから。
すると、力任せに腕が引かれ、店の裏へ引きずられるように連れて行かれる。
「ちょ……っ……何っ……」
その手を離そうと、もがいてみるが、ビクともしない。
いつもは、手加減してくれていたんだと、今さらながらに気づく。
そして、真っ暗な中、建物の陰に行き、背を壁にぶつけられるように押しつけられた。
その勢いに、痛みが走る。
「いっ……」
顔をしかめ文句を言おうとするが、そんな間も無く、唇を塞がれた。
「――っ……!」
両手首を強く押さえつけられ、あたしは身動きがとれない。
どんどん激しくなる口づけに、呼吸は荒くなる。
「――んっ……はっあっ……んうっ……」
呼吸をするために、少しだけ唇を離されると、意思の無い言葉が漏れ出す。
すると、思い切り強く抱き寄せられ、さらに攻勢を強められた。
徐々に、あたしの中の何かが呼び起こされ、うずきに堪えられなくなる。
あたしは、残りわずかになっていく理性をかき集め、岡くんの服を握りしめた。
――ねえ、お願いだから、これ以上振り回さないで。
――お願いだから――逃げさせて。
「――……絶対に、逃がしませんから」
あたしの心の声が聞こえるの。
ほんの少し離れた唇から、聞こえた言葉に、思わず反応してしまう。
「あなたが、誰といようが――誰と寝ようが――最後には、オレが奪います。覚悟してください」
そう言うと、再び、唇は重ねられ、感触を覚え込ませるように口内はすべて彼に奪われた。