Runaway Love
アパートに帰り、ルーティンを済ませ、夕飯を終える。
ひとまず、明日の図書館の本を準備し、着ていく服に頭を悩ませる。
いつもの事ながら――服のバリエーションが無さすぎるのだ。
けれど、頻繁に買う訳にもいかないし……かと言って、着回しが上手な訳でもない。
……ファッション誌でも、買おうかしら……。
思わず、そんな方向に思考がそれてしまう。
どんな状況であれ、野口くんの隣に立つのに、気おくれするような姿では、申し訳無い。
あたしは、クローゼットから、新し目の服を取り出し、いくつか当ててみる。
数十分、悩みに悩んで、上はベージュのカットソー、中にキャミソールを重ね着して、下は長めのフレアスカート。
スカートは、いつも買う時に、身長が低めでも、何とか低く見られないような長さを選んでいる。
短いスカートは、最初からあたしの選択肢に無い。
奈津美が、よく履いていたような流行り物は、好みではないし。
すると、スマホが振動する音が聞こえ始め、あたしは、急いでテーブルに置いていたそれを手に取る。
『お疲れ様です。今、どこですか?』
野口くんは、いつものように、淡々と尋ねてくる。
あたしは、それに安心しながら答えた。
「もう、部屋にいるわよ。ご飯も終わったし」
『そうですか。――明日なんですけど、何時くらいに出ましょうか』
「……いろいろ準備もあるし……早目が良いかしら」
すると、野口くんは、ちょっとだけ甘えた声で言った。
『――引っ越し前に、少し、二人だけでいたいんですけど……ダメですか?』
距離を置くと言っているのだから、本当は避けたいのだけれど――もうすぐ出発で、一か月は物理的に距離を置かなければならないのだ。
あたしは、口ごもりながらもうなづいた。
あまりに突き放す態度を取る訳にもいかない。
一応、まだ偽装という状態は続いているのだから。
「……ま、まあ、そんな荷物とか無いし……夕方くらいまでだったら……」
そう答えると、彼はうれしそうに、
『ありがとうございます』
と、返す。
図書館には、朝いちで向かい、お昼は彼の部屋で作る事になった。
――あれから、ずっと、自分で一食は作るようにしてるんで。
そう言った声に、少しだけ自信が見えたのは、気のせいでは無いと思いたい。
あたしは、再びクローゼットを開けると、服を眺めながら、向こうに持って行くものを選んでいく。
やっぱり、全部は無理だろう。
それに、部屋の収納量だってわからないし。
最低限を持って行って、どうにか着回すしかない。
――うん、一冊、ファッション誌を買おう。
あたしは、あきらめ半分で、そう決意した。
翌朝、若干ぼうっとした頭を軽く振り、起き上がる。
時計を見やれば、七時を過ぎていた。
――ヤバイ!遅刻!!
一瞬で肝が冷えるが、今日は休みだ。
けれど、早く支度をしないと、野口くんが迎えに来てしまう。
あたしは、起き上がると、いつものように朝のルーティンを終え、ご飯を食べる。
テレビをつけると、今日は生憎の雨マーク。
久し振りに、気温が低めらしいので、昨夜考えた服に上着を足す事にする。
片付けを終え、軽く掃除。
大物は明日まとめて洗濯だ。
後は、冷凍品を片付けて、冷蔵庫の中身も無くしてしまわないと。
行く前に、電化製品のプラグは抜いて行くのだから、中途半端に残りそうなものは、明日実家に投げていこう。
メモをしながら考えていると、スマホにメッセージが届く。
――着きました。
その、一言だけ。
あたしは、軽く片付けると、バッグに入れていた図書館の本を確認し、部屋を出て鍵をかけた。
ひとまず、明日の図書館の本を準備し、着ていく服に頭を悩ませる。
いつもの事ながら――服のバリエーションが無さすぎるのだ。
けれど、頻繁に買う訳にもいかないし……かと言って、着回しが上手な訳でもない。
……ファッション誌でも、買おうかしら……。
思わず、そんな方向に思考がそれてしまう。
どんな状況であれ、野口くんの隣に立つのに、気おくれするような姿では、申し訳無い。
あたしは、クローゼットから、新し目の服を取り出し、いくつか当ててみる。
数十分、悩みに悩んで、上はベージュのカットソー、中にキャミソールを重ね着して、下は長めのフレアスカート。
スカートは、いつも買う時に、身長が低めでも、何とか低く見られないような長さを選んでいる。
短いスカートは、最初からあたしの選択肢に無い。
奈津美が、よく履いていたような流行り物は、好みではないし。
すると、スマホが振動する音が聞こえ始め、あたしは、急いでテーブルに置いていたそれを手に取る。
『お疲れ様です。今、どこですか?』
野口くんは、いつものように、淡々と尋ねてくる。
あたしは、それに安心しながら答えた。
「もう、部屋にいるわよ。ご飯も終わったし」
『そうですか。――明日なんですけど、何時くらいに出ましょうか』
「……いろいろ準備もあるし……早目が良いかしら」
すると、野口くんは、ちょっとだけ甘えた声で言った。
『――引っ越し前に、少し、二人だけでいたいんですけど……ダメですか?』
距離を置くと言っているのだから、本当は避けたいのだけれど――もうすぐ出発で、一か月は物理的に距離を置かなければならないのだ。
あたしは、口ごもりながらもうなづいた。
あまりに突き放す態度を取る訳にもいかない。
一応、まだ偽装という状態は続いているのだから。
「……ま、まあ、そんな荷物とか無いし……夕方くらいまでだったら……」
そう答えると、彼はうれしそうに、
『ありがとうございます』
と、返す。
図書館には、朝いちで向かい、お昼は彼の部屋で作る事になった。
――あれから、ずっと、自分で一食は作るようにしてるんで。
そう言った声に、少しだけ自信が見えたのは、気のせいでは無いと思いたい。
あたしは、再びクローゼットを開けると、服を眺めながら、向こうに持って行くものを選んでいく。
やっぱり、全部は無理だろう。
それに、部屋の収納量だってわからないし。
最低限を持って行って、どうにか着回すしかない。
――うん、一冊、ファッション誌を買おう。
あたしは、あきらめ半分で、そう決意した。
翌朝、若干ぼうっとした頭を軽く振り、起き上がる。
時計を見やれば、七時を過ぎていた。
――ヤバイ!遅刻!!
一瞬で肝が冷えるが、今日は休みだ。
けれど、早く支度をしないと、野口くんが迎えに来てしまう。
あたしは、起き上がると、いつものように朝のルーティンを終え、ご飯を食べる。
テレビをつけると、今日は生憎の雨マーク。
久し振りに、気温が低めらしいので、昨夜考えた服に上着を足す事にする。
片付けを終え、軽く掃除。
大物は明日まとめて洗濯だ。
後は、冷凍品を片付けて、冷蔵庫の中身も無くしてしまわないと。
行く前に、電化製品のプラグは抜いて行くのだから、中途半端に残りそうなものは、明日実家に投げていこう。
メモをしながら考えていると、スマホにメッセージが届く。
――着きました。
その、一言だけ。
あたしは、軽く片付けると、バッグに入れていた図書館の本を確認し、部屋を出て鍵をかけた。