Runaway Love
それから、二人、好きなシリーズや映像化の話で盛り上がった。
――と言っても、あたしがテンション高く一方的に話し、野口くんが時々間に挟んでくるくらいだけれど。
いつの間にか、お昼を終えた大野さんと外山さんが戻ってきているのにも、気づかないくらいだった。
「ど、どうしたんだ、お前等」
「え、あ」
驚いてあたしと野口くんを見やる大野さんに、どう答えたものかと悩む。
すると、野口くんは、あっさりと言ってのけた。
「――オレ、杉崎主任と付き合う事になりましたんで」
「――……は??」
「のっ……野口くん⁉」
秘密にしたら意味が無いのはわかるけど!
そんな、あっさりと……!
直後、ようやく状況を把握した外山さんの叫び声が、部屋中に響き渡ったのだった。
外山さんの好奇の視線をひしひしと感じながらも、午後からの仕事が始まった。
今日の引き継ぎ予定は、大野さんと、各部署を回る事。
申請されている予算の振り分けについての、確認と調整だ。
年間の金額は出ているので、月毎に振り分けられているが、微調整やイレギュラー対応は必要。
そして、基本的に、二か月先の予定を確認しなければならない。
――ホント、あたしにできるのかしら。
「まずは、営業からだ」
「は、はい」
スタスタと前を歩く大野さんに駆け寄ると、二人で目の前のエレベーターに乗り込んだ。
「――なあ、マジなのか?」
「は?」
ドアが閉まり、エレベーターが動き出すと、不意に大野さんは、そう尋ねてきた。
「いや……野口と付き合うって……」
「――本当です」
「そ、そうか」
あっさりと認め、それ以上は言わせないように、視線をそらす。
その間に、三階に到着し、二人で降りた。
「――まあ、個人の自由だしな。何かあったら、相談乗るぞ」
「……ありがとうございます」
大野さんは、それだけ言うと、すぐに見えてくる営業部の部屋のドアを開けた。
「お疲れ様です、経理部ですが――榎本部長はいらっしゃいますか」
一瞬、部屋全体が、しん、と、なるが、すぐに奥から部長がやってきた。
「ああ、そっちで話そう。おい、ちょっと、予算がらみで会議だからな」
榎本部長は、そう言って、部屋続きの会議室を指さした。
あたしは、大野さんの後に続くが、その間も視線は刺さる気がした。
会議では、榎本営業部長と、大野さんのやり取りで、粘る部長とギリギリの所で落ち着いた。
部屋を後にしたあたしは、前を歩く大野さんの背中を見て、ため息をつく。
――コレ、あたしがやらなきゃなの……?
「ホラホラ、まだ後いくつ控えてると思ってるんだ?」
「は、はい。すみません」
すると、大野さんは、あたしを振り返り苦笑いだ。
「大丈夫だ。ただの確認だから。そもそも、余程の事がなきゃ、予算の割り振りなんて、大きな変更なんて無いんだ。毎年、ウチの部長が大方は決めてるんだから」
じゃあ、本当にただの確認作業なだけなんだ。
あたしは、少しだけ、ホッとする。
その後、各部署で少しごねられたが、大野さんがその都度調整してくれて、作業は終了となった。
そして、部屋に戻り、次の仕事の説明を受けながら、外山さんにいくつか教えてほしいと言われたので、説明を同時進行する。
野口くんを見やれば、ひたすら、パソコンとにらみ合って、時折マウスを動かしたり、電話をかけたりしていた。
こうやって見れば、仕事はできるんだよね。
「杉崎主任、ここって……」
「ああ、ごめん。これは――」
外れそうになる思考にストップをかけ、午後の仕事をバタバタとこなした。
余計な事を考えている余裕など、ハナから無いのだから。
――と言っても、あたしがテンション高く一方的に話し、野口くんが時々間に挟んでくるくらいだけれど。
いつの間にか、お昼を終えた大野さんと外山さんが戻ってきているのにも、気づかないくらいだった。
「ど、どうしたんだ、お前等」
「え、あ」
驚いてあたしと野口くんを見やる大野さんに、どう答えたものかと悩む。
すると、野口くんは、あっさりと言ってのけた。
「――オレ、杉崎主任と付き合う事になりましたんで」
「――……は??」
「のっ……野口くん⁉」
秘密にしたら意味が無いのはわかるけど!
そんな、あっさりと……!
直後、ようやく状況を把握した外山さんの叫び声が、部屋中に響き渡ったのだった。
外山さんの好奇の視線をひしひしと感じながらも、午後からの仕事が始まった。
今日の引き継ぎ予定は、大野さんと、各部署を回る事。
申請されている予算の振り分けについての、確認と調整だ。
年間の金額は出ているので、月毎に振り分けられているが、微調整やイレギュラー対応は必要。
そして、基本的に、二か月先の予定を確認しなければならない。
――ホント、あたしにできるのかしら。
「まずは、営業からだ」
「は、はい」
スタスタと前を歩く大野さんに駆け寄ると、二人で目の前のエレベーターに乗り込んだ。
「――なあ、マジなのか?」
「は?」
ドアが閉まり、エレベーターが動き出すと、不意に大野さんは、そう尋ねてきた。
「いや……野口と付き合うって……」
「――本当です」
「そ、そうか」
あっさりと認め、それ以上は言わせないように、視線をそらす。
その間に、三階に到着し、二人で降りた。
「――まあ、個人の自由だしな。何かあったら、相談乗るぞ」
「……ありがとうございます」
大野さんは、それだけ言うと、すぐに見えてくる営業部の部屋のドアを開けた。
「お疲れ様です、経理部ですが――榎本部長はいらっしゃいますか」
一瞬、部屋全体が、しん、と、なるが、すぐに奥から部長がやってきた。
「ああ、そっちで話そう。おい、ちょっと、予算がらみで会議だからな」
榎本部長は、そう言って、部屋続きの会議室を指さした。
あたしは、大野さんの後に続くが、その間も視線は刺さる気がした。
会議では、榎本営業部長と、大野さんのやり取りで、粘る部長とギリギリの所で落ち着いた。
部屋を後にしたあたしは、前を歩く大野さんの背中を見て、ため息をつく。
――コレ、あたしがやらなきゃなの……?
「ホラホラ、まだ後いくつ控えてると思ってるんだ?」
「は、はい。すみません」
すると、大野さんは、あたしを振り返り苦笑いだ。
「大丈夫だ。ただの確認だから。そもそも、余程の事がなきゃ、予算の割り振りなんて、大きな変更なんて無いんだ。毎年、ウチの部長が大方は決めてるんだから」
じゃあ、本当にただの確認作業なだけなんだ。
あたしは、少しだけ、ホッとする。
その後、各部署で少しごねられたが、大野さんがその都度調整してくれて、作業は終了となった。
そして、部屋に戻り、次の仕事の説明を受けながら、外山さんにいくつか教えてほしいと言われたので、説明を同時進行する。
野口くんを見やれば、ひたすら、パソコンとにらみ合って、時折マウスを動かしたり、電話をかけたりしていた。
こうやって見れば、仕事はできるんだよね。
「杉崎主任、ここって……」
「ああ、ごめん。これは――」
外れそうになる思考にストップをかけ、午後の仕事をバタバタとこなした。
余計な事を考えている余裕など、ハナから無いのだから。