Runaway Love
「――……そうですか。……すみません、オレが会社まで押しかけたせいで……」
ようやくスイッチが切れた岡くんは、少々シュンとしながら、ベッドに座ったまま、頭を下げた。
あたしは、距離を取って、床に座る。
「……まあ、不可抗力な部分も大きいけど」
「その、野口さんには、どこまで話したんですか?」
「え?」
岡くんは、ベッドから下りると、あたしの前に座り直した。
「――どこまでって……」
あたしは初めの会話を思い出す。
いや、そんなに詳しくは話してはいない。
ただ、二股のウワサが消えるまで、協力するっていうだけだった。
そんな事を考えていると、岡くんは、あたしに顔を近づけて言った。
「――茉奈さん、危機感無さすぎじゃないですか」
「なっ……!」
「大して事情も知らずに、偽装の彼氏役を提案してくるなんて、下心あるとしか思えないんですけど」
「何言ってんのよ。野口くんは、あたしが辞めるの止めたかったから……」
それに、彼には、仕方ない部分もあるのだ。
ギブアンドテイクの約束もある。
「とっ……とにかく、まだ、ウワサは消えてないし、早川とだって距離取ってるんだから、アンタもこういうの、やめてよね」
あたしは、そう言って立ち上がる。
母さんが帰ってきたら、速攻ウチに帰ろう。
そして、野口くんから借りてきた本を読むんだ。
こんな風に、心が乱されない生活を、早く手に入れたい。
――なのに。
「嫌ですよ、そんなの」
岡くんは、再びあたしを抱きしめる。
「ホントは、一日だって、離れたくないのに」
「――……やめてって言ってるでしょ」
隙を見て、今度はその腕から逃れる。
――あたしは逃げてばかりだ。
でも、それでも良いと思うのは――わがままなんだろうか。
ようやくスイッチが切れた岡くんは、少々シュンとしながら、ベッドに座ったまま、頭を下げた。
あたしは、距離を取って、床に座る。
「……まあ、不可抗力な部分も大きいけど」
「その、野口さんには、どこまで話したんですか?」
「え?」
岡くんは、ベッドから下りると、あたしの前に座り直した。
「――どこまでって……」
あたしは初めの会話を思い出す。
いや、そんなに詳しくは話してはいない。
ただ、二股のウワサが消えるまで、協力するっていうだけだった。
そんな事を考えていると、岡くんは、あたしに顔を近づけて言った。
「――茉奈さん、危機感無さすぎじゃないですか」
「なっ……!」
「大して事情も知らずに、偽装の彼氏役を提案してくるなんて、下心あるとしか思えないんですけど」
「何言ってんのよ。野口くんは、あたしが辞めるの止めたかったから……」
それに、彼には、仕方ない部分もあるのだ。
ギブアンドテイクの約束もある。
「とっ……とにかく、まだ、ウワサは消えてないし、早川とだって距離取ってるんだから、アンタもこういうの、やめてよね」
あたしは、そう言って立ち上がる。
母さんが帰ってきたら、速攻ウチに帰ろう。
そして、野口くんから借りてきた本を読むんだ。
こんな風に、心が乱されない生活を、早く手に入れたい。
――なのに。
「嫌ですよ、そんなの」
岡くんは、再びあたしを抱きしめる。
「ホントは、一日だって、離れたくないのに」
「――……やめてって言ってるでしょ」
隙を見て、今度はその腕から逃れる。
――あたしは逃げてばかりだ。
でも、それでも良いと思うのは――わがままなんだろうか。