幸先輩が甘く迫ってくるのですが。

「っ…」



心臓がうるさいほどに音を立てて、幸先輩に伝わってしまいそう。



「…耳、弱いの?顔真っ赤っか…かーわい」



「〜〜っ!」



妖艶な笑みを浮かべる幸先輩は、まるで別人。



さながら小動物を狙う、捕食者のよう。



だ、だれ…?このひと…。ほんとに幸先輩…?



幸先輩のさらりとした髪の毛が目にかかるくらいの至近距離と、頬に添えらた先輩の骨ばった手。



触れられた頬が熱くなり、そこからじわじわと顔全体に広がっていく。



その熱を辿るかのように、幸先輩の細くて長い指先が唇を撫で、体がビクッと小さく震えた。



「っせ、せんぱ…」



「…いいの?あんまり可愛い顔してると、ほんとに食べちゃうよ?…もちろん、そーゆー意味でね」



「…っ!」



幸先輩の顔が近づき、思わず目を瞑ったとき。



「はぁ〜疲れた…。職員会議とかほんとだるいわぁ…」



っ!!保健室の先生だ…!!



保健室の先生である筒香 朱里(つつごう あかり)先生…もとい、つっちゃんがボヤきながら帰ってきた。



み、見つかったら怒られちゃう…!!



「…ん?ここ、誰かいんの?」



そんなつっちゃんの声が聞こえて、もうダメだ…と諦めかけていたら。
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