幸先輩が甘く迫ってくるのですが。

「ごめんね、意地悪しすぎた」



「え…っ?」



耳元でボソッとこぼした幸先輩は、私に布団をかけ、サッとベッドから降りてカーテンを開けた。



「つっちゃんお帰り。今、この子が具合悪そうだったから保健室連れてきたんだよね」



幸先輩の表情は見えないけれど、おそらくいつもの笑顔に戻っている。



代わりにつっちゃんの顔がひょっこり見えた。



「なんだ、誰かと思ったら幸だったの。後輩…って、あれ?桜庭?」



「え、えへへ…ちょっと頭が痛くて…」



幸先輩の話に合わせて苦笑すると、「たしかに」と頷くつっちゃん。



「なんか妙に顔赤いし、今日はもう帰ったら?どーせ運動部は休みだから」



「〜〜っ、はい…」



うぅ…もうやだ、穴があったら入りたい…。



今日だけで一生分の恥をかいた気がする…。



「…じゃあ、俺はこのあと用があるから帰るね。バイバイ、ひなみちゃん」



「あ…は、はい」



つっちゃんの一言で余計に顔が熱くなっていくのを感じていると、幸先輩は手をヒラヒラ振って保健室を去っていった。
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