幸先輩が甘く迫ってくるのですが。
おねだり上手
うららかな春。
眩しくも晴れやかな気分にしてくれるこの木漏れ日と、小鳥のさえずりが聞こえる桜並木。
私の心も釣られて穏やかに……
「なるわけないんだよなぁー…」
ふらりよろめく。
その足取りは重いのなんの。
昨日の幸先輩との出会いが、まさかこんな結末を招くだなんて…。
「はぁ…」
意識せずともため息はこぼれる。
この瞬間にも幸せが逃げていってるのかな…でも、今さら吸う気にもならないや…。
色々あれこれあった昨日の放課後が忌々しい。
幸先輩に興味を持った段階で手遅れだったのかもしれないけれど。
私の委員会の仕事がなかったらそもそも会わなかったわけだし、やっぱり運がなかったとしか言いようがない気がする。
……あれ?
そこで、ふと思った。
そういえば、なんで幸先輩は保健室になんかきたんだろう…?
あのとき、具合が悪そうにはとてもじゃないけど見えなかった。
体調不良どころか、私を持ち上げてたしね。
怪我をしていた…わけでもないだろうし。
女の子と一緒にもいなかったから、ただ保健室前を通りがかっただけ?