幸先輩が甘く迫ってくるのですが。
それで、自分の名前が聞こえたから私に話しかけた…ってこと?
………だとしたら私の自業自得では…?
「……はぁ」
「幸せ逃げるよ?」
「わっ!?!」
いきなり後ろから聴き馴染みのある声がして、思わず勢いよく振り向いた。
「あははっ、相変わらず大袈裟だなー」
そこにいたのは、言うまでもなく幸先輩で。
「幸先輩…?!どっ、どうしてここに…!?」
「俺もここ通学路なんだよね。そしたらひなみちゃんがいたからさ、声かけようかなーと思って」
特に昨日のことを気にした様子もなく話す幸先輩に、どことなーく違和感を感じた。
…昨日の“アレ”はなかったことになってる…のかな。
それならそれでこちらも助かるし、警戒する必要もなくなる…よね?
昨日も帰り際に謝ってくれたんだから、もうあんなことにはならないはず。
うん、そう思うことにしよう。
もうこれ以上幸先輩のことで悩むのはこりごりだもん。
なぜか二人で登校することになっちゃったけど、それも気にしない気にしない。
「ひなみちゃん、さっきよろめいてたよね?ため息もはいてるし…大丈夫?」