幸先輩が甘く迫ってくるのですが。
覗き込むように目線が下から注がれる。
「っ、わざわざ聞かないでください!」
言ってるうちに段々と頬が熱くなってくるのに、それでも幸先輩は逃してくれない。
「じゃあ…ひなみちゃんは俺のことが好きって思うことにしようかな?」
幸先輩の意地悪な笑みは、昨日のそれと全く同じで。
「好っ……ひ、人としてならですが!?」
「あははっ」
…これは、完璧にからかわれてる。
幸先輩の手のひらの上で転がされまくってると嫌でも自覚してしまった。
そんな会話をしながら桜並木を通りすぎ、高校に近くなってきた頃。
「…先輩、ここから別々で登校しましょう。というかそうしてください」
「あぁ…うん、わかった。そうしよう」
人通りも増え、同じ高校の制服もチラホラ見かけるようになったからそんな提案した。
その理由は明瞭簡潔。
幸先輩と関わりのある女子に、二人で歩いているところを見られたら面倒くさいからの一択だ。
「なんであんな子が?」「釣り合ってない」「私を差し置いて」……etc。
最悪、体育館裏に呼び出されてリンチに合う可能性も…。
そんなの絶対に嫌すぎる。