幸先輩が甘く迫ってくるのですが。

うぅ…やっぱり中学からの付き合いがある怜美には、いつもバレちゃうんだよなぁ…。



「じゃ、教室戻ろ。付き合ってくれてありがとね」



微笑む怜美に私も「うんっ」と笑顔を返して、保健室前を通り教室へと向かう。



保健室前の廊下は、甘いムスクの香りが漂っていた。







「私はもう帰るけど、ひなみは用事あるんでしょ?」



午後の授業を乗り越え、掃除もSHRも終わった放課後。



帰りの支度を終えた怜美に話しかけられて頷く。



「今日、保健委員の仕事があったの忘れてて…」



これは咄嗟についた嘘…ではなく、実は本当のことで。



私が入っている委員会は保健委員会なんだけど、一ヶ月に何回か保健室当番をしなければならない。



部活で怪我をした人とかに簡単な手当をしたり、ベッドの使用を管理したりする。



それがちょうど今日だったのだ。




「じゃあ、私は帰るよ。頑張ってね」



「うん、ありがとー」



教室を出ていく怜美を見送り、私も支度を整え保健室に向かう。



はぁ…思い立ったが吉日っていうのに、なんでこういう日に限って仕事があるんだろ…。
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