幸先輩が甘く迫ってくるのですが。

となると、あとは体調不良の人しか来ないということになる。



運動部以外で保健室に来たことがある人なんてほとんどいないし、実質今日の仕事はナシみたいなもの。



「はぁ…こんなことなら幸先輩のところに会いに行ってみるんだった」



って、もしかしたら体調不良の人が来るかもしれないからそういうわけにもいかないけどね。



誰もいないのをいいことに、こっそり独り言をこぼしたときだった。



「誰か呼んだ?俺のこと」



「ぅわあっ!?」



よく通る綺麗な低音が後ろから聞こえて、思いっきり声を上げる。



「あははっ、驚きすぎ」



そんな私の様子を見てケラケラ笑っていたのは…。



「ゆ、幸せんぱっ…」



「うん、幸先輩ですよー」



ゆるい雰囲気をかもしつつ、余裕のある笑みを浮かべる幸先輩だった。



な、なんでここにっ…?!



あ、もしかして体調不良とか!?



頭に思い浮かべていた人物が、そして会ってみたかった人が目の前に現れて大パニック。



「け、怪我ですか!?それとも体調が悪いとか…あっ!ベッド使います!?」



先輩に近寄って慌てて聞くと、幸先輩は目をぱちぱち瞬かせて…。
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