幸先輩が甘く迫ってくるのですが。

「ちなみに俺は幸環ね。めぐるは、環境の環の字」



…ということは、幸せがめぐるって書いて幸環…?



「へぇ…!すっごく良い名前じゃないですか!」



「でしょ?けっこーお気に入り」



ニコニコ、とってもご機嫌な幸先輩。



可愛い顔するなぁ…。



初めて知った幸先輩の下の名前。



先輩の嬉しそうに笑う無邪気な顔を見ると、どうも女泣かせの遊び人とはかけ離れて見える。



「俺のこと知ってたんだね。さっきは呼ばれてびっくりした」



「っ…!」



や、やっぱり聞かれてた…!



さっきとは違う意味でドキッと心臓が跳ねる。



どうにか言い訳しなくちゃ…。



「え、えぇっと、その…幸先輩は有名ですから…」



「ふーん…どんな風に?」



「どっ…」



どんな風に……!?



そのまま正直に言っていいものなのか、はたまた嘘をついた方がいいのか。



私にはそんな思考を巡らす暇もなく…。



「お、女たらしとかプレイボーイ…とか…」



うっかり口を滑らせてしまった。



「「……」」



そう言った瞬間、互いの間に沈黙が流れる。
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