りつとるね

まだまだ続く鬼のレッスン

特訓開始から数日後の金曜日夕方。ようやく律から及第点がもらえた。

「やったー! これで、週末はゆっくり休めるー!!」
「甘いな。100点満点で言うなら、まだ60点。おまえの実力は、こんなもんじゃないだろ」
「えー、じゃあ、どうしろっていうのよぅ」
ブーたれると、目の前に譜面が差し出された。
「何、コレ……」
律の手製だ。

ひったくるようにして目を通すと、課題曲の旋律のアレンジだった。
しかも、それ自体が一つの曲として成り立っている。導入から展開、徐々に盛り上げてクライマックスへ。そして、いきなり転調して別メロディーに移ったかと思うと、ちゃんと元通りの旋律に戻ってエンディング。

律は、毎年伴奏しながら、アドリブみたいな間奏を付け足していた。
それがいつも評判で、律の演奏が終わると会場が興奮と称賛で騒然となる。

「何これ、すごーい! 律の作曲? 挿入するピアノソロ? うわあー、きれい。めちゃくちゃ盛り上がりそう! いいな、いいな、私もこんなの弾きたいー」
「弾きたいなら弾け」
「え? 律の間奏じゃないの?」
「いや、おまえ用に作った」
「え、ほんと? いいの? もらっても? やったー! ありがと、律。でも、こんな超絶技巧できるかなぁ」
「ということで、今夜から泊まりで猛特訓な。おまえの親は了承済み」

「ええっ、うそでしょ――!!」
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