りつとるね
――お次はBメロ´。Bメロのアレンジだから、ここは大丈夫。

それでね、中学入ってからは音楽とは関係ない部活に入ったりで、ピアノの練習はますます疎かに。
だから、お稽古日にはもうボロボロ。つっかえつっかえしか弾けなくて、先生に叱られたり、呆れられたり。

そんなときに限って(りつ)が、――あ、律っていうのは、山崎先生の息子。私と同じ年で近所だから、つまり、幼馴染ってやつ。
律は、先生の子どもだから、当然ピアノも上手なわけよ。
で、その律が、私のお稽古日には、なぜかそばにいたりする。

レッスン室は広くて、グランドピアノとアップライトピアノと、隅には電子ピアノも置いてあってさ。私がグランドピアノでレッスンつけてもらってると、律がヘッドホンで電子ピアノを弾いてることがよくあるの。

ある日、私が弾けなくて怒られてたら、律のヘッドホンから曲が漏れて聞こえてきたのよ。
それが、紛れもなく私が今弾けなかった曲! しかも、流れるような音でサラサラ~ッと。(はー、どうせ私は下手ですよっ)
ね、律って嫌みなヤツでしょ!

そんなこんなで、結局、ピアノは中2で辞めちゃった。
合唱コンクールの伴奏だけは、引き受けてるけどね。
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