りつとるね
――おっと、伴奏に集中しなくちゃ。ほーら、きたきた、そろそろサビに向かうよ~。
気を付けないと、サビは超絶技巧なんだよ。ったく、先生たち、なんでこんな難しい曲選ぶかなー。
でも、各伴奏者がみんな習得してくるところがスゴイのよねー。

タラタラッタラ、ンタタンタン……♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬
んでもって、変調変速、どんどん速くなるって、もー何なのよー、この曲!

ん-、ッタ、ンタンタ、タッタタッタ? タタタタタタ??
(やばい、ついてけない!)ッタ、ンタンタ……
「っく……(ムリ―!)」

あ……どうしよう、つっかえて指が止まった……
あー、入れない。ダメ、もう弾けない、わぁ~んっ……

私のピアノが止まっても、合唱はアカペラで続いてる。
どうしよう……どうしよう……焦って涙が込み上げた。

練習不足を猛烈に後悔した。
難しくたって、私ならできたはず。他の伴奏者はちゃんと弾けてたてたのに、私だけ弾けないなんて。
くやしい!くやしい!くやしい!

500人がしぃーんと見守る中、私はボロボロ涙をこぼして呆然となった。
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