夏に咲く君に、きっと恋する【完】
 あれから、2回目の夏が近づこうとしていた。

 とはいえ、まだ桜の花びらが舞う季節であるのだが。

 私は桜の木の下に立っていた。向こうから近づいてくるのは、紛れもなく彼だった。久しく会っていなかったが、私が進路の報告をしたいと呼び出したからだ。

 「久しぶり、もう卒業か」

 「おかげさまで、春から文学部生になります。私、日本語についてもっと深くまで学びたいと思ってしまって」

 「そうか、やっぱり日和だな」

 彼はそう告げるだけで、約束など忘れているように。私はどうもじれったくなってしまって、あの日の約束を、口にした。
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