夏に咲く君に、きっと恋する【完】
 「……覚えてますか。

 私、あれから一度も気持ちが変わらなかったんです。先生の側に立ち続けたいって。私も先生を、人として尊敬しています。でも、尊敬だけじゃなくて、本当に好きなんです。言い訳も無しに、ただ蒼って呼びたいし、その笑顔を、一番近くで見ていたいんです。

 私じゃまだまだ子供で、未熟で、先生の人生には物足りないかもしれませんが」

 早口気味に、そう告げる。

 気恥ずかしさが胸を覆う。今度は、素直に心の内を話せた。私の性格は、彼と出会ってからだいぶ丸くなったと思う。

 「覚えてるよ。鮮明に。言葉は、教師と生徒という上下関係も、年齢という壁すらも乗り越えてしまうんだな」

 はにかみながら彼は続ける。

 「俺も、その時は散々思わせぶりな事を言ってしまった自覚がある、申し訳なかった。未熟なのは、俺の方だ。

 でも今は、もういいよな、溶けてしまいそうなくらい好きで、どうしようもない。本当は無邪気で、素直で、心から誰かを愛すことのできる日和は本当に素敵なんだ。

 そんな日和への、紡ぎきれないほどの愛おしさが、俺を殺そうとしてる気がする。だからこれからも俺と一緒に」

 「一緒に嫌いで、でも離れられない、雨と夏を乗り越えていきましょう、って?」

 私がそうふざけると、彼の表情も和らいだ。

 そうして、しばらく二人で笑いあった。
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