夏に咲く君に、きっと恋する【完】
ある日、いつものように少し開けた窓の隙間から入ってくる夏の匂いと心地良い風を感じていた。
ーー静かに、今から新しい先生が来る、国語の先生だ。
と声を張り上げるのは担任の黒田だ。余程暑さに耐えきれないのか、最近はしかめっ面をしていることが多い。すぐ倒れてしまいそうなほど痩せていて、顔に血色のけの字もないような人だ。そんな貧弱な体つきで、よく夏、というものを毎年乗り切れているな、と思う。私は黒田の言葉を聞きつつも、相変わらず外を眺めながら物思いにふけっていた。
しばらくしてから、ガラガラガラ、と音がして教室の扉が開く。新しい先生にさほど興味は無かったが、どんな先生が来たか見てやろうといった態度で、私はちらりと教卓を見る。そこに現れたのは、背が高く痩せがちであるものの黒田とは正反対に、健康そうで生徒に熱そうな人だった。短髪で端正な顔立ち、透き通った眼。これが周りに好かれる顔なのか、と思うものの然程羨ましくはなかった。
そんな事を考えているうちに彼は黒板に名前を書き終えていた。苗字は小笠原。あまり聞かない苗字だ。名前は蒼、あお、というらしい。決して私の好きなタイプでは無かったが、生徒に向けた屈託のない笑顔は彼の人柄の良さと愛嬌を表しているようだった。
ーー現代文を担当します、皆さんに現代文の面白さを伝えられたらと思います、これからよろしくお願いします。
なんて、当たり障りのない言葉で、彼はホームルームを締めくくった。
ーー静かに、今から新しい先生が来る、国語の先生だ。
と声を張り上げるのは担任の黒田だ。余程暑さに耐えきれないのか、最近はしかめっ面をしていることが多い。すぐ倒れてしまいそうなほど痩せていて、顔に血色のけの字もないような人だ。そんな貧弱な体つきで、よく夏、というものを毎年乗り切れているな、と思う。私は黒田の言葉を聞きつつも、相変わらず外を眺めながら物思いにふけっていた。
しばらくしてから、ガラガラガラ、と音がして教室の扉が開く。新しい先生にさほど興味は無かったが、どんな先生が来たか見てやろうといった態度で、私はちらりと教卓を見る。そこに現れたのは、背が高く痩せがちであるものの黒田とは正反対に、健康そうで生徒に熱そうな人だった。短髪で端正な顔立ち、透き通った眼。これが周りに好かれる顔なのか、と思うものの然程羨ましくはなかった。
そんな事を考えているうちに彼は黒板に名前を書き終えていた。苗字は小笠原。あまり聞かない苗字だ。名前は蒼、あお、というらしい。決して私の好きなタイプでは無かったが、生徒に向けた屈託のない笑顔は彼の人柄の良さと愛嬌を表しているようだった。
ーー現代文を担当します、皆さんに現代文の面白さを伝えられたらと思います、これからよろしくお願いします。
なんて、当たり障りのない言葉で、彼はホームルームを締めくくった。