夏に咲く君に、きっと恋する【完】

　私は現代文が好きだ。本を読む事も好きだ。その人にしか紡ぐことの出来ない言葉の形が素敵だと思っている。

　言葉というものはすごい。嬉しさも、悲哀も、憎悪も、はたまた心が空っぽで真っ白な状態であったとしても、頭の中には簡単に情景が、登場人物の気持ちが浮かび上がってくる。日記や作文の範疇を超えた言葉の紡ぎ合いには、素人にもわかるほど響くものがある。

　新しく来たのが現代文の先生と聞いて少し期待していた自分がいたのだろうか、そこには、明らかに彼を目で追ってしまっていた私がいた。無論、恋愛感情とかそういう類のものではない。彼とは特別関わる機会も無く、ただの教師と一生徒という位置づけにすぎなかった。