お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~
「昨日の夕方、取りに実家に戻った。だから一時的に君から離れた。不安にさせたみたいで、ごめんね」

 物を浮かせられるのは見ていたからわかる。
 だけど、隠し持つことまでできるなんて、いったいどうなってるんだろう。
 聞いてもきっと彼にも答えられないだろうけど。

「本当はさ、月曜日に渡すつもりだったんだ」
 私たちの運命をわけた月曜日だ。
 あの日、ちゃんと待ち合わせ場所に行ったら、彼は事故に遭わなくてすんだのだろうか。

「女性は指輪を自分で選びたいものだよね? 作るのはあとからでもできるから、石だけ買っておいたんだ。俺はドジだからあの日も家に忘れてたんだけどね」

 彼はごまかすように笑う。
 涙で潤んで、彼の姿がぼやけた。

「俺の遺産、受け取ってくれる?」
「そんなプロポーズする人、あなたくらいよ」
 私は目を拭ってからケースをしっかりと受け取った。

「これからも一緒にいてね」
「もちろんだよ!」
 答える彼は、晴れやかに笑顔を浮かべた。

「このダイヤがあれば死後認知がしやすくなると思う。俺に結婚する意志があったってことだから」

 この前、あれがあればって言っていたのは、このダイヤのことだったんだ。
 はっきり言ってくれたら良かったのに。

 私も、怖がらずに聞けばよかった。
 後悔しても戻らないけど、でもこれからは。

 私はまた彼を見た。
 前よりも透き通って見えて、私は目をこすった。涙のせいかと思ったが、やっぱり透明度が上がっている気がする。

「あなたの姿、薄くなってない?」
「あれ?」
 彼は立ち上がり、自分を見る。

「そうかも」
 彼は困ったように私を見た。

「心残りだったプロポーズができたから……かな」
「そんな!」
< 40 / 46 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop