お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~
私は彼の手をつかもうとした。でも、彼の手をつかめず通りぬける。
「嫌、やめて、お願い、成仏しないで」
「最初は成仏させたがってたのに」
彼は苦笑する。
私はなんども彼の体に手を伸ばす。だけど腕も肩も、なにもかもすりぬけてしまう。
彼も手を伸ばしてくれる。でもやはり私を通りぬけた。
「俺もそばにいたい。だけど、なんだか無理そうだ」
彼の体が少し浮き上がった。
空の雲間から太陽が顔を覗かせる。
光の筋が彼に向かって伸びて来た。
彼はまぶしそうにその光を見た。
「嘘よ、やめて、行かないで!」
「ちゃんと手続きして、遺産を受け取ってね」
光芒が増え、明るさが増した。
「お金なんていらない!」
「ダメだよ、俺の最期の愛だから」
「そんなこと言わないで!」
最期だなんて、そんなこと。
「なんとなく四九日はいられると思ったのになあ」
彼の体がさらに浮き上がる。
立ち上がって必死に手をつかもうとする。彼もまた手を伸ばす。
彼の足が先に浮き上がる。逆立ちするような姿勢で、彼はずっと私に手を伸ばす。
届きそうで届かない指先は、徐々に私から離れていく。
「嫌だよ、カズ、行かないで!」
「どこにいても、なにも言わなくても、俺は君を愛してる」
その言葉が最後だった。
カズは見えないなにかに引っ張られるように上を向いて昇り始めた。
光の柱を、ただまっすぐに天に上昇していく。
「お願い、そばにいて!」
私の叫びは届かず、カズの姿は光に溶けて見えなくなった。
「そんな……」
私はがくっと膝を突いて座り込んだ。薄茶色の固い地面に、私の涙がぽつぽつと染みを作った。
「見て、あの光! 天使の梯子だよ!」
誰かが叫んだ。
みなが空を見上げてスマホをかかげる中、私は一人座り込み、地面を見つめていた。
「嫌、やめて、お願い、成仏しないで」
「最初は成仏させたがってたのに」
彼は苦笑する。
私はなんども彼の体に手を伸ばす。だけど腕も肩も、なにもかもすりぬけてしまう。
彼も手を伸ばしてくれる。でもやはり私を通りぬけた。
「俺もそばにいたい。だけど、なんだか無理そうだ」
彼の体が少し浮き上がった。
空の雲間から太陽が顔を覗かせる。
光の筋が彼に向かって伸びて来た。
彼はまぶしそうにその光を見た。
「嘘よ、やめて、行かないで!」
「ちゃんと手続きして、遺産を受け取ってね」
光芒が増え、明るさが増した。
「お金なんていらない!」
「ダメだよ、俺の最期の愛だから」
「そんなこと言わないで!」
最期だなんて、そんなこと。
「なんとなく四九日はいられると思ったのになあ」
彼の体がさらに浮き上がる。
立ち上がって必死に手をつかもうとする。彼もまた手を伸ばす。
彼の足が先に浮き上がる。逆立ちするような姿勢で、彼はずっと私に手を伸ばす。
届きそうで届かない指先は、徐々に私から離れていく。
「嫌だよ、カズ、行かないで!」
「どこにいても、なにも言わなくても、俺は君を愛してる」
その言葉が最後だった。
カズは見えないなにかに引っ張られるように上を向いて昇り始めた。
光の柱を、ただまっすぐに天に上昇していく。
「お願い、そばにいて!」
私の叫びは届かず、カズの姿は光に溶けて見えなくなった。
「そんな……」
私はがくっと膝を突いて座り込んだ。薄茶色の固い地面に、私の涙がぽつぽつと染みを作った。
「見て、あの光! 天使の梯子だよ!」
誰かが叫んだ。
みなが空を見上げてスマホをかかげる中、私は一人座り込み、地面を見つめていた。