お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~
「お知らせくださってありがとうございます」
 早く電話を切りたかった。これ以上、彼の死をつきつけられたくなかった。

 だけど、梶尾さんは続けた。
「今日、時間ありますか? 一緒にあいつに会いに行ってくれませんか。あいつも会いたがってると思うので」

 私は迷った。
 だけど、この機会を逃したら、もう彼にお線香をあげにいくこともできないかもしれない。

「わかりました」
「じゃ、今日の午後一時に駅前で。迎えに行きますから」
 了承して、私は電話を切った。





 梶尾さんが車で迎えに来てくれると言うので、私は黒いワンピースを着て菊の花束を持って待った。
 待ち合わせののち、梶尾さんに連れて行かれたのは総合病院だった。

 持って来た菊の花束は病院には似つかわしくないので、彼の車に置かせてもらった。

「どうして病院に?」
「ここにいるから」
 彼は暗い顔で答える。

 もしかして、霊安室に連れて行かれるのだろうか。
 私は怖くてうつむいた。

 彼は、だけど、どんどんと入院患者がいる病棟へ向かう。

 すれ違う人が喪服の私に驚いてじろじろ見て来る。
 黒いワンピースなんて着て来るんじゃなかった。
 そう思うけど、今さらどうしようもない。

 彼に連れて行かれたのは個室の病室だった。
 ノックしてから、返事を待たずにドアを開ける。

 衝立の向こうに、白いベッドがあった。
 窓が開いていて、白いカーテンが風でふわっとふくらんだ。

 梶尾さんについてベッドのそばに寄る。
 そこにいたのは、カズだった。

 頭にも頬にも大きなガーゼが貼られていた。そのほかは布団で隠されていて、様子はわからない。

「こいつ、月曜日にさ、ボールを追いかけて飛び出した子供をかばって、車に轢かれたんだ」

 私は驚いた。
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