お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~
エピローグ
***
一年後。
私は赤ちゃんを抱いて、着物を着て神社にいた。
生まれたのは女の子だった。今は祝着を着て不思議そうに周りを見ている。
カズは紋付袴を着てぎくしゃくと歩いていた。
私はつい笑ってしまった。なぜか娘も一緒に笑い始める。
「そんなに固くならなくても。この子も笑ってるわよ」
「でも、この子にとって初の神社で、俺にとっても初のお宮参りなんだよ」
神社を背に、私が娘をカメラに映るように抱っこして、三人で並ぶ。
正面にはカメラマンとアシスタントがいる。
「パパさん、もっと笑って」
カメラマンが言う。
「パパって言われた」
彼はうれしそうに笑う。
「もういい加減に慣れて」
「だけど、うれしいから!」
これほど喜んでくれる人が夫で良かった。
自然と、笑みがこぼれる。
「俺も抱っこしたい!」
「どうぞ」
彼は娘を大事そうに抱きかかえた。
カメラマンが何回もカシャカシャとシャッターを切る。
私、撮ってもらった中からベストショットを選べるのかな。
彼は、とカズを見る。
全部の写真を部屋に飾ってしまいそう。
私は彼を見て微笑した。
神社にはみずみずしい新緑があふれていた。青空が広がる明るい陽射しの中、彼と娘の笑顔はなによりも輝いていた。
* 終 *