お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~
「ボールペンごときで」
「だって、君にもらったやつだよ!」

「それ百均のやつよね」
「君にもらったんだ、値段なんて関係ない!」

「命と引き換えにする値段じゃなくない?」
「物は大事にしないといけないだぞ!」

「命はもっと大事にしなさいよ」
「そうだけどさ」
 彼はしょんぼりとうつむく。

「なんで幽霊になんてなってるの?」
「君に未練があるから、かな」
 言われて、ぞっとした。

 幽霊に未練があって出て来るって、殺されるパターンじゃない?

 そういえば、と思い出す。
 彼は一昨日の夜、死んでも私を愛すると宣言していた。

「うわあ、私に執着しないで! お願い、成仏してください!」
「ひどい。俺のこと愛してるんだよね?」

「そうだ、お経!」
 スマホでお経を流す。が、彼は顔色一つ変えない。

「そういう安直な発想はどうかと思う」
「え、効かない!? 実はキリスト教徒!? えっと、その場合はどうしたら……十字架!?」

「そうじゃなくて。俺の未練を晴らそうとか思ってくれないの?」
「未練って、なに?」

「君のこと」
「わあ、やっぱり! 道連れはやめて!」

「そうじゃない!」
「浮気したんだから、浮気相手のところに行けばいいじゃない!」

「浮気なんてしてない!」
「あ、そうか、私が浮気相手か!」

「二股なんてしてないよ!」
「嘘つき。ずっと愛してるって言ったくせに」

「嘘じゃない。だから死んでも会いに来たんだ」
「信じられない。だって私、相手の女の人に会ったのよ」

「そんな心当たりはまったくないけど、どんな人?」
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