寄り道

そんな人じゃない。斉木さんはすごく優しい人。

そんなことする人じゃない。

ガタン!!

「華ちゃん?」

「うるさいよ。」

何を言ってるんだ私。

『え?藤波さん?』

「仕事もろくに出来ない奴がそんなくだらない噂話して。いいご身分だね。アンタらの仕事のミス全部被ってんの誰か知ってる?斉木さんだよ。」

頭では分かっている。

こんな事言ってはいけない。

『え?でも斉木さんそんなこと一言も…。』

「アンタたちが大事な部下だからでしょ。教育方法としてはとても良くないと思う。でもそれが斉木さんなりのアンタたちへの優しさでしょ。それなのにアンタたちはベラベラ本当かも分からない噂話して恥ずかしくないの?」

こんな事言ったら私はとても不利な状況に立たされる可能性がある事も分かっている。

それはこの子たち次第だが。

頭では分かっていても感情で動いてしまった。

恥ずかしいのは私の方だ。

『うぅ…。ごめんなさい…。』

「華ちゃん…。」

「何があったんですか?!何で泣いてるんですか?大丈夫ですか?」

なんというタイミング。

ご本人登場。

『私たちがいけないんです。ごめんなさい。』

あー。これは完全に女の涙は何とやらだ。

「藤波さん。何があったんですか。」

ここはもう悪になってしまおう。
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