寄り道

2人の心


それから斉木さんとはよく話すようになった。

あそこのスイーツが美味しい。

あそこの居酒屋が美味しい。

ジムで鍛えているはずなのにお腹が出てきた。

他愛もない話ばかり。

大橋さんも加わって話をしたりとても楽しくて素でいられるようになっていた。

家では相変わらず良き母であり続けている。

外に出ると肌を冷たい空気が包み込む季節がやってきた。

私が1番好きな季節だ。

桜の木も身ぐるみ剥がされている。

「寒そうだね君も。」

今日は私と夫の結婚記念日。

今年も何も無いだろうと思っていた。

「たまには2人で過ごすといいよ。私が孫と一緒にいたいだけだけど。ふふふっ。」

とお母さん。

夫にその事を伝えるとなるべく早く帰るだとか。

たんたんと仕事を終わらせてそそくさ帰宅した。

゛ご飯は家で食べる?外で食べる?゛

一応夫に連絡を入れてみた。

ご飯を作るのが面倒なのもある。

ピロン

゛今日は帰れそうにないから会社に泊まるよ。始発で帰るから゛

゛分かったよ。゛

前の私なら床に崩れ落ちていただろう。

娘はお母さんとアイドルのライブDVDを見ると楽しみにしていた。

好きなご飯を作ってもらって食べているだろう。

私はどうしよう。

実家に行ってもお母さんが心配するだろう。
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