寄り道
その女の子が私ということは気づかないふりをした。
まだ7年もある。今も私の事を思ってくれているかどうかも分からない。
「その子は結婚して子供もいる。だからどうこうなろうとは思ってなかった。ただ会社で会えればそれで良かった。でも同じ部署になってダメだと分かっていてもブレーキが効かなくなってきてた。最近思うんだその子のことを待っていようって。」
「待っていなくていいんじゃないですか?長いですよきっと。待ってる間辛いですよ。斉木さんはその子を待っているのに、その子は家族の所へ毎日帰っていくんですよ。だったら斉木さんもいい人が現れたらそっちへ行っていいと思う。」
また私は気づかないふりをする。
ずるい女だ。
「その子だから俺は待ちたい。他なんかいらない。今よりもっとおじさんになった俺を受け入れてくれるかは分からないけど。笑」
「受け入れてくれますよきっと。こんな素敵な人に出会えて幸せって泣いちゃうかも。」
涙がポロポロ落ちてくる。
テレビから流れてくる斉木さんの好きな曲。
どこかで聴いたことがある。
自分の気持ちを信号機で表現している。
今の私みたいだ。
泣いている私の頭に大きな温かい手が触れた。
「大丈夫。大丈夫。」
安心する手だなぁ。
魔法の手みたい。
斉木さんから大丈夫と言われると本当に大丈夫に思える。
大丈夫。
あと7年きっと乗り越えられる。
今日のことは絶対忘れられない。
この気持ちを1回心の片隅に仕舞おう。