ミューズな彼女は俺様医師に甘く奏でられる
3・絶望
■
目を開けるとベッドへ寝かされていた。
視界も思考も半分は夢の世界に取り残されているのに、手首の痛みだけはクリアだ。
「起きたのね、グッドモーニング」
エミリーの声。
「ここは? 今何時?」
「ベリカ大学病院のVIP室で午後七時。グッドモーニングじゃなくイブニングね。挨拶、やり直そうかしら?」
「ううん、いい」
明るく振る舞うエミリーから置かれた環境を察する。
「私、手首だけじゃなく他も悪いのかしら?」
「詳しい検査結果はまだ出てなくて、貧血を起こして倒れたって聞いてる。それより最高にクールな演奏をしたみたいね? お陰で電話が鳴りっぱなし」
言葉とは裏腹、電源を落とした画面を見せていた。点滴の針に気を付けつつ身体を起こそうとすると、ノックが響く。
「たぶん、ドクターよ。三十分置きに桜の様子を見に来てる。はーい、どうぞ」
私の了承なく白衣を着た真田氏が入ってきた。彼はすかさず起床を手伝い、手首の状態を確かめる。
「テーピングをしてみたが、きつくないか?」
「……大丈夫」
「痛むか?」
「えぇ、少し。でも平気」
倒れる間際、彼に泣いて縋った記憶は消せない。いくら取り乱していたとはいえ、まるっきり子供だった。
真田氏と目が合わせられない。
「ドクター、彼女は今夜はここで過ごす? それとも連れて帰っていい?」
「ホテルへ戻ったらマスコミに追われないか?」
「桜のパパが別荘を手配してくれたわ。実家は帰りたくないだろうって。ノースエリア内はパパラッチも取材が出来ないんでしょ?」
目を開けるとベッドへ寝かされていた。
視界も思考も半分は夢の世界に取り残されているのに、手首の痛みだけはクリアだ。
「起きたのね、グッドモーニング」
エミリーの声。
「ここは? 今何時?」
「ベリカ大学病院のVIP室で午後七時。グッドモーニングじゃなくイブニングね。挨拶、やり直そうかしら?」
「ううん、いい」
明るく振る舞うエミリーから置かれた環境を察する。
「私、手首だけじゃなく他も悪いのかしら?」
「詳しい検査結果はまだ出てなくて、貧血を起こして倒れたって聞いてる。それより最高にクールな演奏をしたみたいね? お陰で電話が鳴りっぱなし」
言葉とは裏腹、電源を落とした画面を見せていた。点滴の針に気を付けつつ身体を起こそうとすると、ノックが響く。
「たぶん、ドクターよ。三十分置きに桜の様子を見に来てる。はーい、どうぞ」
私の了承なく白衣を着た真田氏が入ってきた。彼はすかさず起床を手伝い、手首の状態を確かめる。
「テーピングをしてみたが、きつくないか?」
「……大丈夫」
「痛むか?」
「えぇ、少し。でも平気」
倒れる間際、彼に泣いて縋った記憶は消せない。いくら取り乱していたとはいえ、まるっきり子供だった。
真田氏と目が合わせられない。
「ドクター、彼女は今夜はここで過ごす? それとも連れて帰っていい?」
「ホテルへ戻ったらマスコミに追われないか?」
「桜のパパが別荘を手配してくれたわ。実家は帰りたくないだろうって。ノースエリア内はパパラッチも取材が出来ないんでしょ?」