ミューズな彼女は俺様医師に甘く奏でられる
真田は変わった。実際、強くなったと感じる。
不安や焦りを顔に出さない代わり尊大な態度を取っていたが、結婚してからはデフォルトで偉そうだ。
俺の部屋に来ては奥さん自慢を垂れ流すステレオとなる。
「惚気ついでに奥さんの何処が好きか、聞いても? スピーチの参考にさせて貰おうか」
「全部です」
「真田先生、具体的にお願いできるかい?」
「……そうですね、一つあげるとすれば不器用な生き方、かな」
「演奏技巧に長けたヴァイオリニストが不器用とな?」
教授就任祝いとして真田から万年筆を贈られた。なんでもブーケ代わりらしく、次に結婚するのは俺だという意味だと。
「自分にはヴァイオリンしかないって子供みたいに泣きじゃくった時、完全に落ちました。桜の泣き顔、可愛いんですよ?」
「ほぅ、試しに泣かせてみるか」
「桜を泣かせたら教授相手でも容赦しませんが? 過去の悪事をばらします」
「なんだよ、過去の悪事って。あ、悪事といえば高橋が転勤になったな。誰の差し金やら?」
「……さぁ? 医師免許を剥奪されないだけでもマシでしょ」
「俺はさ、お前だけは敵に回さないように気をつけるよ」
「でしたら桜にちょっかい出さなければいいんです。簡単です」
メモを取る手を止めた。おめでたい席のスピーチに慎太郎の容赦なさを語るのは無粋だ。
「あぁ、やっぱり衣装選びを一緒にしたいな! 写真と実物だと違うだろうし。桜が面倒がって適当なやつを選ぶ可能性もあるな。適当っていうのは全部似合うからどれでも変わらないって事でーー」
ちらりとこちらを伺う慎太郎、俺は顎でドアを促した。
不安や焦りを顔に出さない代わり尊大な態度を取っていたが、結婚してからはデフォルトで偉そうだ。
俺の部屋に来ては奥さん自慢を垂れ流すステレオとなる。
「惚気ついでに奥さんの何処が好きか、聞いても? スピーチの参考にさせて貰おうか」
「全部です」
「真田先生、具体的にお願いできるかい?」
「……そうですね、一つあげるとすれば不器用な生き方、かな」
「演奏技巧に長けたヴァイオリニストが不器用とな?」
教授就任祝いとして真田から万年筆を贈られた。なんでもブーケ代わりらしく、次に結婚するのは俺だという意味だと。
「自分にはヴァイオリンしかないって子供みたいに泣きじゃくった時、完全に落ちました。桜の泣き顔、可愛いんですよ?」
「ほぅ、試しに泣かせてみるか」
「桜を泣かせたら教授相手でも容赦しませんが? 過去の悪事をばらします」
「なんだよ、過去の悪事って。あ、悪事といえば高橋が転勤になったな。誰の差し金やら?」
「……さぁ? 医師免許を剥奪されないだけでもマシでしょ」
「俺はさ、お前だけは敵に回さないように気をつけるよ」
「でしたら桜にちょっかい出さなければいいんです。簡単です」
メモを取る手を止めた。おめでたい席のスピーチに慎太郎の容赦なさを語るのは無粋だ。
「あぁ、やっぱり衣装選びを一緒にしたいな! 写真と実物だと違うだろうし。桜が面倒がって適当なやつを選ぶ可能性もあるな。適当っていうのは全部似合うからどれでも変わらないって事でーー」
ちらりとこちらを伺う慎太郎、俺は顎でドアを促した。