そんなの、嘘。
第一章
第一話
「最近、おかしなことが起こるの」
私、小島 和音は小声でそっと、電話の向こうの母に打ち明けた。
『おかしなことって?』
「なんていうの、怪奇現象っていうか……」
『やだっ、何それ。あんた霊感とかあるほうだっけ?』
「いや、全くないって安心してたんだけど……、でも最近は……」
母は『やだやだやだっ』と連呼してから、
『とにかく、おじいちゃんの法事の前日には帰って来なさいよね』
と、慌てるように言い、一方的に電話を切った。
「切らなくても……」
『ツーツー』と虚しく音がする電話に向かって、私はひとりごちる。
すると。
『ギュイイインッ』
電話の向こうで、不穏な音がした。
驚いて、スマートフォンを耳から離す。
「何、今の音っ」
恐る恐る、もう一度スマートフォンを耳に近づけると、『ツーツー』という音に戻っている。
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