そんなの、嘘。
スマートフォンを置いて。
学校の課題に取り組もうと、狭いアパートの部屋の隅にあるデスクに腰かける。
私は、地方の田舎の町の出身で。
どうしても都会の美術大学に進学したくて。
高校を卒業して、上京してきた。
両親は小さな旅館を営んでいるけれど。
その旅館は、兄が継ぐことが決まっていて。
家のことは兄に任せきりにしている。
(ちょっと心苦しいけれど)
でも、作品に没頭できる環境は、正直ありがたかった。
課題は、教授が描いたいくつかのマークをどれか選んで模写して、一枚のイラストにするというものだった。
模写は終わっていたので、あとはこのマークから何のイラストを描くのか、考えなくてはいけない。
デスクに向かい、マークを見つめていると。
ドンッ!!
「わっ!!」
上から大きな音が聞こえて、驚いて声をあげてしまう。