そんなの、嘘。
「覚えてるよ、中村さん。いつも旅館のこととか、ありがとうございます。お元気でしたか?」
中村さんは大学を卒業後、地元の関西で就職したけれど、この町に旅行に来て、本人曰く『ビビッときた』らしく、仕事も辞めて移住してきた人。
イカつい見た目だけど、優しい人だ。
「おおきに。変わりなく、元気でした。お嬢さんは……、その、お元気ですか?」
「?」
中村さんは言いにくそうに、
「えらいこっちゃ。がっつり憑かれてはるから……」
と、私の後ろを見る。
「中村さんは、霊感あるの?」
「私は……そない霊感があるってほどのもんとちゃいますけど……、お嬢さんに憑いてはる人はよう見えます」
「誰だか、わかる?」
「誰……、そう言われても……。高校生の男子に見えますわ。制服着てはるし」
やっぱり高校生の男子なんだ。
「それってさ、私が着ていた制服と同じの着てない?」
「あぁ、そうですね。同じ深緑色の制服着てはるわ」
「……そうなんだね、やっぱり」
「『やっぱり』?」